名誉院長のブログPage9


名誉院長

名誉院長からのメッセージ

 

歯科衛生士

名誉院長からのメッセージ  《81~90》



83.《入れ歯の話》
82.《大學入試》
81.《噛み合わせを測る器機》


                  ⦅Vol71~Vol80⦆>>



83.《入れ歯の話》

 世間で入れ歯の話をすると、直ぐに保険の入れ歯、保険外の入れ歯の話になるようです。これは、盲腸の手術に保険、保険外? そのような知識を一旦頭のオールクリア―ボタンを押して入れ歯を考えたいと思います。
 先ず患者さんの歯を治療して残せなかったという事は、歯科医師の敗北であるという前提に立つ必要があります。では歯を抜くという事を科学的に考察してみたいと思います。噛む時に上下の顎に自分の体重を支えるくらいの力が加わるわけです。これは親知らづを除いて28本の歯の根っこで力を受けるわけです。さらに正確に言うなら上下糸切り歯から前12本は噛む力を受けるのではなく別の働きがあります。したがって残る奥の16本で噛む力を受けるわけです。奥の歯の根の形は、あらゆる力に耐えられるように根の形が、アサガオの様に開いたり、ガニ股のような形をしたり人類の進化の過程で、その食べ物に合わせて形が進化してきたようです。根の面積を全て足すと、かなりの面積になるものと思います。ですから強い力で物を嚙ことが出来ます。
 では入れ歯を作る場合、一番大事なのは、元あった根の面積か、場合によってはそれ以上の面積で噛む力を顎の骨に伝えなければいけないという事です。そのためには最初の段階で入れ歯の型を取ることの大事さが理解できると思います。この型をとることがとても重要です。一言で型を取ると言いますが歯を失った口の中の構造をよく理解しないと必要な根の面積に近くすることは不可能です。
 歯を無くした顎堤の型をとるなら簡単です。既成のトレーで印象材を入れてとれば完成です。これが殆ど現在行われている一般的な方法です。しかし、歯を失った口の中の筋肉の付け根は人によりすべて異なる事や、歯を失って時間がたつと歯の代わりに、以前に書いた様に、頬の筋肉と舌の筋肉が歯の代わりをして、型をとるときに入れたトレーと材料を異物と判断するので、それらに抵抗して、型をとった面積を大きくすることが不可能です。ですから出来た入れ歯は小さくなります。すると歯根の面積に対してとても小さい義歯が出来上がります。(これは歳とは関係なく顎の骨を著しく吸収させます)
 出来る限り広い面積の型を取ろうとすると、頬の筋肉と舌の筋肉が邪魔をしてもそれに対抗する型の取り方が要求されるわけです。それに対処するのに考え出されたのが3回に分けてとる方法です。上下の型を取るために既成のトレーではなく、その人に会ったトレー作成が必要です。これが出来たら口の中を指で細部まで触診して噛む力を受けられる骨、粘膜の部分を十分に事前に頭に入れる必要が有ります。
 教科書では筋肉の動く部分は避けるとありますが、筋肉の可動部の上まで型をとる必要があります。何故なら咀嚼時に筋肉が動く部分は、すべての筋肉が動く部分とは異なるからです。目的はいかに面積を広くするかにあります。そのために個人にあったトレーに、少しずつアメのような少し柔らかい材料をヘリに足しながら触診、材料を少量加えて口の中のわずかな隙間の型をとっていきます。片方の型を採得するのに1時間以上かかります。下の顎は全体に筋肉の可動部分が多いので、なかなか面積を限界まで広げることが難しいので熟練の技が必要です。型が取れたら、それを技工室でその型を崩さない工夫が必要になります。これは共同作業しないとうまくいきません。
 型を模型に興す場合も限界まで大きくする工夫が技工室で加えられます。
次に入れ歯の床を一般の入れ歯を作るように精密にレジンに置き換えます。
この床を使い、顎関節を基準に機能咬合器に付着します。(この操作はとても熟練を要します)当然噛む面の人工歯は金属になります。これは機能咬合器を利用しないと不可能です。
歯の色や形を患者さんの顔に合わせて試適して制作します。さらに機能咬合器の上で微調整します。機械と顎の動きは連動していることが前提条件です。装着時には殆ど噛む面は調整する必要がありません。
 このように作ります、最初は多くの患者さんが入れ歯の大きさに戸惑いますがすぐに慣れます。現在までにテレビ出演後や義歯のトラブルなどを通じ多くの問題の有った入れ歯の考察を下記にまとめました。
1、 多くの型(正確には機能印象)が不十分 2、噛み合わせが顎関節を基準に取れていない。3、下の顎は横から見るとハサミと同じ原理で動いている、当然奥に行くにつれ力が増す。前歯は奥の顎を弱い力でコントロールする役目の意味が理解できていないようである。4、前歯の位置が下の消失した顎の骨より唇側に出て、顎のコントロールが不正確 5、噛む力を受ける奥の歯の配列が問題。奥の顎堤の斜面の上に歯が配列してある。その部分に力が加わるとスキー板の様に滑り、入れ歯が安定しない。6、奥の歯は4本必ずしも並べる必要がない。奥から二番目の6番に噛み合わせの軸が来るので顎堤の斜面の上に歯牙を配列せず3本で済ませる場合もある。7、口蓋の部分の入れ歯の床の位置があまり奥だと、モノを飲み込みにくくなる、8、上下顎の距離が間違って低いと舌を噛む、高いと入れ歯をいれていると疲れる。
8、噛み合わせの狂った入れ歯をいれていると、関節の円盤が変形するので、それがある程度収まるためにはエクササイズデンチャーで関節円盤を安定させてから機能咬合器で精密な入れ歯を製作する必要なケースがある。せめて上記の1-2つくらい守らないと、いくら調整に時間をかけても入れ歯は安定しない。不定愁訴の原因になる。
 自院でのトラブルを含めてテレビ出演後に来院した多くの症例から、以上のようにまとめることが出来る。
 入れ歯は、全ての人の顔が異なるように、歯を失う過程で咬合のトラブル、それが引き起こす顎関節の変化など多数ありますが書ききれないので、この程度にしました。
最後に日本人の顎は小さく、おそらく世界で難しい部類とおもいます。また正しく作られた入れ歯に接着剤は認知症以外に全く必要がない。歳などは関係ないことを記載しておきます。上記の条件を満たした入れ歯の患者さんから、年賀状に何でも良く噛めるというコメントが増えるようになりました。2022-2-23   



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82.《大學入試》

 1月になると受験生は何となく落ち着かなくなるのではないでしょうか。
あの大学に入りたい、こんな仕事をしてみたい、浪人はしたくない等々。
私も人生の中で一回だけ大学を受験しました。
 昭和40年、前回の東京オリンピックの次の年に歯科大学を受験しました。
工業高校なので高校では一切受験の準備をしていませんでした。
 以前に書いたように電電公社(元NTT)の職員をしていましたので何をどの様に勉強したらよいのかわかりませんでした。実は大学に興味を持ったにはそれなりの出来事がありました。麻布の電電公社の寮に入り3か月半の訓練を受けていました。その時に寮の同僚が定年まで勤めたら年金が良いというような話を聞いた時に、ガクッときました。なんと夢がないのだろうと。訓練が終り次第、組織からサヨナラしたいという気持ちが芽生えました。寮で副寮長をしていたので、寮の食堂のアルバイトの大学生と話をするようになりました。その中の一人は、寮の一室に住み込みで朝夕の食事を作っていました。学生にとても興味を持ちましたので食堂に出入りをしてそのアルバイトの学生に近づきました。Yさんはなんと、定時制高校を卒業して関西から上京し、たしか中央大学の理工学部に在籍をしているとの事。身近にまさかの自分が目指す目標の人が出現しました。色々な話をするので、そんなに興味があるなら大学のゼミに一度連れて行っても良いと言うのです。ニセ学生ですが恐る恐るYさんの後について当然学生のような顔をして(内心ドキドキ)どこのゼミか忘れましたが一回参加をしました。それがきっかけで、熱性疾患にかかった様に大学に入りたいという思いが募りました。
 転職を決意していたので時間があると横浜駅の近くの大きな本屋に行き受験に必要な勉強を始めました。高校時代はクラス全員がどこかの会社に就職するのが当たり前の雰囲気でした。しかし中には3-4人くらい大学を目指していた人もいました。
 当方は全くそんなことを考えたこともありませんでした。転職を考えたときに実は無線を通じて海外に興味があり兄弟も多いので海外に移住をする準備と考えました。その為にどこの大学でもよいから大学生になりたい。準備を始めてしばらくしたときに、当時技工士をしていた3番目の兄が新設の歯科大学が神奈川県に出来たので受験しないかと言われました。軽いノリで受験票を取り寄せ、兄が受験に必要な費用を負担するから、と言ってくれました。準備(およそ準備とは言えない程度)をして、当時電電公社の電報課は当然24時間営業をしていましたので勤務は交代制。確か三交代でした。泊りの時は仮眠があり、ひそかに受験の準備をしました。受験は泊り明け、週休、年休の3日間で臨みました。受験会場に到着すると参考書を手にした競争相手がいっぱいいました。昔柔道の試合の時に会場に着くと対戦相手はすべて自分より強いような感じでした。それは自分が納得をいく練習をして臨むなら話は別ですが、今回の受験と同様に大した準備をしていない。よし、こうなったら開き直る以外にない。覚悟を決めて受験会場に入りました。問題用紙が配られました。
 国語、英語、数学、物理、化学、生物、だった記憶があります。最後の3教科は選択で、私は物理、化学を選択しました。問題を見たときにシマッタ!!化学が良くわからない。その時に隣の女子の生物の問題用紙を見たら、中学の時に師範出で優秀なクラス担任の女性の理科の先生から厳しく教わっていたのを思いだしサット手を挙げ「すみませんが化学を生物に変えてください」と頼みました。運よく直ちに問題用紙を交換して頂き中身を見ると、これはいけそうである。数学、物理は何とか、国語は白紙ではまずいのでピント外れでも、兎に角いっぱい書く。あたかもできたような雰囲気をつくる。困ったのが英語。これはもともと自分の頭に英語のデータがない。そこでとっさに和文英訳は、そうだ和文の文章に矢印をつけて簡単な日本語に自分なりに変換。そして中学生レベルの英語に直しました。語学は自分の言いたいことが相手に伝わればよい。と開き直りました。この考え方は後に海外でとても役立ちました。
 さあどうなったのか?受験を勧めた兄と一緒に発表を見に。アッタ。なんと自分の名前があった。受かった。おそらく電電公社の職員を2年していたら、ぬるま湯につかり脱出は不可能だったと今でも思っています。公社の強力な引力に引かれ無理だった。
 書いていたら当時の出来事か昨日のように思い出されました。
 いざ大学生になって最初にビックリした話。同期から君は何教授の関係で入ったのかと言われ、最初は理解できなかった。ソーカ、私立はコネ、カネが物を言うことを少し理解していたので分かりました。6年間のうちで最初の2年は教養を身に付けるという事で、授業の内容は殆どの受験勉強をした連中には問題がないが、当方は受験勉強をしていないので、特に国語、英語は殆ど赤点。追試にお金がかかりいつもオフクロに新しい本を皆が買うので、との理由で大学に多額の追試のお金を払いました。6年のうちの後半の3年からの専門課程では追試は殆どなくなりました。貧乏学生の私の目から見たところ裕福な連中なので、きっと奨学金を受け取る人は少ないかもという事で申し込んだらOK。このお金は横須賀の名所、ドプ板通りで社会勉強の月謝に消えました。
 しかし、歯科医療のことはアルバイトで技工物の研磨を手伝ったり、それらを届けたり、それなりに裏口からの歯科医院を理解していました。しかし、電気理論に比較するとそれらは理論がないようだし今後ライセンスを取ってもハッキリ言ってあのようなつまらないことに時間を割くのはお金だけでなく、自分の本当の生き甲斐になるのか?
 とても悩みました。思いついたのが毎日鎌倉駅を通過していたので、途中下車して時には学校をサボッて八幡様に行きました。当時神社の境内で国宝級の仏像を確か見られたと思います。そして仏像を何時間も眺めて今後どうしたらよいのかと物思いにふけりました。結論は、今の歯科の現状の情報を集めることにする、自分の方針を定めました。大学は一度社会人になるか、海外の様に簡単に休学して自分が長期に何がしたいのか?将来を考える必要性を今でも感じています。これから進路を決める人に少しでも役に立てば幸いです。
 人生一度しかありませんから。幸福な人生を生きるために!!   
                     2021-1-20



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81.《噛み合わせを測る器機》

世の中には目に見えないものを測る器機が山ほどあります。
一例をあげると、現在話題になっているCO2を測定する機器です。
 私の測定器との出会いは、小型の電圧などを測るテスターです。中学の時に小遣いを貯めて秋葉原で購入したものです。当時の形は弁当箱ほどの大きさで、それは現在も活躍しています。中高時代は受信機や送信機の制作に活躍しました。
 転職して歯科学生になり、ある補綴の教授から咬合の新しい機器を製作するが、お前は電気が得意なので、ある会社に同行するように言われました。それは噛む力をひずみ計で測定して咬合を解明したいという目的のものです。
 恐る恐る教授に同行して先方の技術者と話を始めると相手は教授の言うことを殆ど理解できず、また、技術者の言うことを教授は理解できませんでした。その時にお互いに専門家といえども、話しが通じないことがあるのかとビックリしました。
 仕方がないので、その場でお互いの言うことを通訳して話をすすめました。その経験は後に役に立ちました。自分は電気の基本を学んでいるので当然ということが、いかに教授と言えども理解出来ない現実。これは、歯科の知識を患者さんに伝えるときに、自分は専門家として理解をしているが、患者さんがそれを理解するのには、通訳に等しいものを使わないと理解が難しいことを納得しました。そして思いついたその一つが現在の後藤歯科で活躍するコンピューター、システムです。
 歯科界での測定器との出会いは、ムシバをひどくした歯を保存する目的の根管治療に歯の根の長さを測る器機があります。理論は一種のテスターで当時は高額で私のような貧乏学生には手の届くわけがありません。ある日、友人がその機器の回路図を手に入れたので、さっそく調べると無線機に比べると、とても単純な回路図なので直ちに自分で制作を思い立ちました。 秋葉原に出かけ試作器の制作を開始。ポリクリで使用。効果は抜群。そして友人に話をしたら欲しいという人が何人も出てきました。当時インドネシアからの留学生がいて話をしたら欲しいというので、再度秋葉原に出向いて大量に部品を仕入れて、空いた時間を見つけて、自宅でハンダ付けをして何台も制作し小遣いを稼ぎました。
 卒後何年もして同窓会で思わぬ人から、あの時はとても役に立ったとのこと、何台制作したかは全く記憶にないので懐かしい思い出です。
 開業してから華々しく登場したのが、デンタルサウンドチェッカーです。これは上と下の歯の当たる音を小型のブラウン管上で波形をモニターするという、原理はとても簡単な機器です。(しかし高額)会社の触れ込みは、これを使うと咬合の異常を見つけられるということでした。これは、考えた方が全く逆で、関節を基準に歯を作ると左右の波形がシャープになり、顎で共振をするので、関節基準に上下の歯のバランスが取れているかを見るものです。 しかし、咬合の基本的な理論が理解できないと使いこなすことは不可能です。例えば、右と左の高さの異なる靴を履かせて、その歩く動きを再現すると高さによって色々なパターンが出てくるのは容易に想像ができると思います。しかし左右の靴の高さを整えると、歩き方は一定の安定したパターンになると思います。これと同じで、補綴治療で、関節基準に歯を作り、この確認のために利用すると、この機器はとても役に立ち今でも使っています。  当時保険の点数にこれが算定されたので爆発的に売れたようです。 歯科医学的に本当に役に立ち、多くの人が使えば製造中止になることはなかったものと思います。残念ですが現在は手に入りません。噛み合わせを調べる機器は、出ては消えるサイクルが短いようです。
 現在後藤歯科では、噛み合わせの印記したものを電子的に読み取り、そして噛み合わせのエネルギーが左右、前後どちらに動くのかという、コンピューターを利用した機器を利用して画面で確認をしています。これはとても優れた機器です。現実には出てきた波形から、噛み合わせの異常の治療をするというコンセプトで使っています。これも先ほどのデンタルサウンドチェッカー同様に、関節を基準にバランスをチェックするには素晴らしい成果を発揮します。
 残念ですが、これは保険の点数が無いので現在あまり売れていないようです。いずれ姿を消すかもしれません。さらに左右のかむ力を測る器機。これらを利用して、人間の左右の咬合のバランスを整えると足裏のパランスが安定します。 足裏のバランスを見る機器で測定し顎関節を基準に歯を制作すると見事にバランスが整います。
 これらの治療を進めると、歩行が安定してきます。これは、NECとアシックスが開発した高額の歩行の揺らぎを測定する機器で測ると実証できます。また歩幅が広くなったり、手の振りが大きくなったり、体の左右の揺らぎが安定して歩行が明らかに安定したことを確認することが出来ます。 この機器は咬合治療の最後に関節基準に歯を調整し、全体バランスを測定するのに多大な貢献をします。残念ながら歯科用ではありませんが。人間はサルから分派して立ち上がり、特に首と腰に負担がかかっています。これらの機器を使いこなすと、頭(咬合)からだんだん下にアンバランスの症状を出すことの仮説が成立します。
  最後に、咬合のバランスをとる過程で関節の雑音が劇的に消えることを確認しています。この測定に良い機器が無いので自分で自作して測定していますが、どこかの会社がこの測定器を制作したら面白いと思いますが、やはりデンタルサウンドチェッカーのように売れないので制作はしないものと思います。しかし、測定すると、本当にウソのように関節の雑音が消えます。現在自作の試作品でPCへのデータの蓄積からも、とても満足できる結果を得ています。追加として、口唇を噛むようなことも治療で簡単に治ります。
噛み合わせについて、いろいろ書いてきたので、多少概念を理解していただけたと思っています。
これらの現象はコロナの時にマスコミで、ある大臣が薬の副作用をデマ、デマと騒いだのと同様に扱われそうです。残念ながらすべて事実です。しかしこれを第三者が再現するにはスタッフの理論武装、技工士の技術、材料の精度などの問題を解決しないと再現できないことも事実です。ですから世間では残念ながら、エビデンスがありません!!で終りです。

  -2021-12-25  本日は夫婦で友人の病院の開院記念に参加しています。

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