名誉院長のブログPage10


名誉院長からのメッセージ

 

歯科衛生士

名誉院長からのメッセージ  《91~100》


91.《古代の遺跡と歯科医療F》


                  ⦅Vol81~Vol90⦆>>


古代の遺跡と歯科医療F  第91回
CS放送の科学番組を見ている。古代のエジプトを含めた、世界各地の遺跡の発掘番組は新発見があると何歳になっても胸躍ります。中でも特に不思議なのは、古代の神殿などの建築に使用した巨大な石、一説には20トン位はざらで、100トンを超える巨石も有り古代の人たちはどのように切断、移動したのか?今の重力と昔の重力は地球の回転で異なっていたのか?
石のカットした面を調べると現代の最新の機械でカットしたり、レーザー加工したりしても、あのような精密な加工は再現が難しいようです。顕微鏡で調べると石の専門家でさえ、あの時代に本当に加工できたのか、その加工した機器の痕跡はあるのか。それらの矛盾を解決するために古代の宇宙人説を唱える研究者が出現するのは理解できる。宇宙から高度な文明を持った人? が地球人に技術を提供した。その痕跡として、世界の各地に岩絵が彫られている。なかには宇宙服を着ているような姿もあり、反重力技術を持っていたと言われると、なんとなく今の地球の技術からすると納得出来そうな気がする。
中でもいつも興味を持ってみるのは、やはり動物の頭蓋骨です。特に人骨の頭部は自分の仕事と関係し、50年以上最前線で膨大な患者さんのレントゲン、CT画像、機能咬合器からの顎の動き、特に咬合の異常と関節の変形の関係などを診ていると、興味の対象になります。 遺跡から見られる状態は頭蓋骨から下顎骨の脱離、それに顎骨から歯牙が脱離し多くが歯牙を失っている事実。何で興味の対象かというと、人間が活動するのに、この部分は関節円盤、歯のまわりの歯根膜、(これらは動く部分です)動物は、これらのパーツを使って餌をとり、それぞれに進化したわけです。
 動物の生命を保つために必要な、餌をとるための口腔は、進化の過程を調べてみると、餌によって、あごの形が変化したのは事実です。肉食動物は餌が激しく暴れたれ時に顎が外れないように歯の面と、顎関節の位置が殆ど平らになっていることや、草食動物は、歯の面が臼のようになっているケース。
以前から特に江戸時代の頭蓋骨を見てみたいと思っていました。
2023-11-17日に東京大学総合研究博物館に行きました。
特別展示のタイトルは(骨が語る人の生と死)です。日本列島一万年の記録より。
念願の頭部の頭蓋骨を、縄文時代、鎌倉時代、江戸時代の頭部、特に顎関節、上下顎骨の観察と、写真の撮影は可能とのことで、細部にわたり写真撮影をしました。
頭蓋骨の大きさや、関節頭の大きさや、歯の配列、噛む面の摩耗などを観察すると、何となく食生活が分かるような気がしました。なかには、噛む面がすり減り、顎の咬合balanceがそれにより自然にとれていたと思わるケース。
さらに発生学的に調べると、母親の子宮の中で頭蓋骨が形成する過程で、耳と関節の部分は殆ど同時に出来てくるようです。ですから顎関節の症状が耳にも起こることも仮説として成り立ちそうです。やはり咬合を理解するには、子宮の中、誕生、成長、歯牙の治療、やがて老化で背が縮むと同時に、咬合も大幅に変化する、そして死。
多くの頭蓋骨を観察すると、中には、下顎大臼歯の残根が観察されて、周囲の顎骨が溶けている状態を観察することが出来ました。この症例は、生前かなりひどい顎骨炎を患い、抗生剤が無いので頬が腫れて、頬の部位から大量の膿が出て、高熱にうなされて、かなり長期に寝たきりで、食事もできず、その間に骨が溶けてなくなったものと想像できます。今までにも、歯周病で前歯がググラしているケースで、酷い顎骨炎や、虫歯をひどくして、歯の頭がなく、重症な顎骨炎を治療した経験から、生前の状態が目に見えるようでした。
又、江戸時代に梅毒で、頭蓋骨の一部が侵されているケースなども興味深く観察することが出来ました。
 私のライフワークの一つである、咬合を理解するには、患者さんの今の一時点での観察では理解しづらいことも納得しました。
頭蓋骨から下あごが外れ、なおかつ歯が下顎、上顎のソケットから歯牙が外れるということは、前に書きましたが、その部分が動くわけです。さらに、高齢化により、頭蓋骨の変化、生涯に渡り噛み合わせは変わるので、咬合学はなんだかわからなくなるのは当然のことと最近強く感じます。歯科界では歯を治療して詰めたりかぶせたりして、その時に違和感を訴えると、中には靴が合わないのが、そのうちに合うようになる、そのうちに慣れるとかいう話を多くの患者さんの証言から知ることが出来ました。
実はこの慣れるということは、先ほど書きましたように、時には、関節がそれに合わせて変形する事実を多くの顎関節症の患者さんのCT画像から知ることが出来ました。又は最初は歯牙が動き、さらに歯の周りの骨がなくなり、歯が脱離すると不定症状が解決。だから、人によって顎関節症は、いじるな!!というのも理解出来ます。
 多くの患者さんを治療してくると、この矛盾が死後の頭蓋骨からも観察することが出来ました。食事と、顎の状態も推察することが出来ます。
例えば患者さんに食べられますかと? と問うと、私は何でも食べられますと自信をもって答える患者さんを多数経験しています。しかし、その食事の内容を問うと、柔らかいもの、お豆腐などと自信をもって答えます。然し、その患者さんが縄文時代に生きていたら、おそらく生きることは不可能だったと思います。理由は、縄文時代の頭蓋骨は歯牙の咬合面が減っている事から、食事は筋張ったものなどと、今の食事とはまるで異なるようなことが、頭蓋骨から読みとることが出来ました。火を使うようになってから、食べ物が変化。江戸時代の頭蓋骨からは、顎骨炎のほかに、咬合面が平らなケースも観察しました。これは、一般的な庶民が食べていた食事の中に、砂利や、細かい固い異物が混入、それらを食べて歯牙がすり減ったものと思われます。明らかに歯ぎしりとは異なるようです。今なら食物の中に、少しでも砂利が入っていたら、たちまちテレビで大騒ぎになると思います。
 多くの頭蓋骨から、何の努力もしないで、現代の進んだ科学の恩恵を受けられ、まして歴史的に他国と比較して戦争の少ない日本に生まれたことを思わず感謝せずにはいられないと実感しました。     2024-3-19



先頭に戻る







前のページに戻る