名誉院長のブログPage7


名誉院長

名誉院長からのメッセージ

 

歯科衛生士

名誉院長からのメッセージ バックナンバー 《61~70》



70.《時効の話》
69.《武漢肺炎と歯科医療(1歯単位と1口腔単位)》
68.《AIと歯科医療》
67《ドローンで見えない口の中》
66.《ドローンで診る口の中》
65.《カニと卵》
64.《若い歯科研修医の為に》
63.《イグノーベルと矢花法》
62.《インターンシップとマザーテレサ》
61《卒前教育、卒後教育の違い》

 


<<《Vol 71~Vol 80》   ⦅Vol51~Vol60⦆>>



Vol 70 《時効の話》

..
 開業間もないころ、歯科医師募集のため母校を訪ねていました

 そんな時に学生時代にお世話になった放射線の教授にバッタリ大学病院で会いました。歯科医師の求人で訪れましたと話をしながら学生時代のノリで冗談を言いながら教授がレントゲンの撮影をするというのでついて行きました。その時に急に真顔で、君は咬合がわかるかね!?と質問されました。当時研究会で咬合の司会をしていたので、つかさずハイ何とか!と答えました。すると教授の口から、ワシャー顎関節症は咬合が原因だと思う。よかったら患者さんをソット紹介するので診てくれないか?と言われました。まさか?

 恐れ多くも大学の教授からお願いされるとは夢にも思いませんでした。学生時代、大学隣の海軍の歯科室で見た大学が行っていないような素晴らしい技工物を見学してカルチャーショックを受けていたので、それ以来、咬合に興味を持ち、入局後も師匠から咬合学を沢山勉強させて頂きました。開業後は技工士と夜遅くまで色々な症例に悪戦苦闘していたので直ちにOKしてしまいました。

 後日教授からの紹介状を持参して患者さんが来院されました。技工士、衛生士、スタッフに話をして医院一丸となって対処。説明後、顎の動きを精密に機能咬合器に再現しました。なんと、顎関節を基準に診断をすると、それは目で見ても明らかに顎が上下、左右にヅレているのを確認しました。それまでも歯を作るときにいつも顎の動きを調べていましたが、歯を作らないで今ある歯の顎の動きを調べると、こんなに咬合に不調和な人がいるものかと驚きでした。しかし患者さんに噛んでください、と言うと、それとなく少しちぐはぐながらも、ちゃんと噛んでいるので、ソーカ、脳からの命令で歯を合わせることができること、人間は犬やネコと異なり、大きな口をあくと関節が前に出るので噛み合わせをゴマかせるという事に気付きました。それは咬合器の上で再現していましたが口腔との関連が理解できていませんでした。  技工士と悪戦苦闘して、咬合器に噛み合わせを再現して歯を作り、その中でデータを正確に記録して、それが1-2年後に別な部分の歯を作るときに咬合器で再現すると、基準点が変わり、何でと疑問を持っていました。

 また機能咬合器に再現して歯を作ると、色々な症状が消失する事、これを大学から紹介を受けた患者さんの顎の動きを機能咬合器に精密に装着して、研究会で話をしたら誰にも相手にされませんでした。しかし現場では患者さんの変化を観察すると確実に首から上の色々な症状は消失。早速放射線の教授に報告しました。

 そのことがきっかけで、顎関節症の症例を機能咬合器に乗せて詳細に記録を取り、何でそのようなことが起こるのかということを技工士の意見を取り入れて検討しました。

 当医院の技工士はいつも機能咬合器で歯を作っているので、彼らの意見も大いに参考になりました。

 精密に関節を基準に歯を作っても、1-2年すると患者さんによっては、関節の基準点が変化する事実があります。脳外科に相談すると、一度狂った噛み合わせは脳にメモリが残りそれが治療を複雑にしているかもしれないというアドバイスをいただきました。そこで「真理はすべて口腔にあり机上にあらず」を思いつき、後藤歯科医院の標語にしました。診療室のいたるところに標語を掲げました。

 医局員時代の研究会の司会で、論文はそれとなく目を通していましたが、論文だけでは細部は理解できないことを実感しました。

 患者さんは口が開きやすくなった、関節の音が消えた、肩こりがなくなった、朝起きたときに頭がすっきりする、歩きやすくなった、(他にも体全体の変化の記載はあるが、誤解を受けるのでこの程度に)などの、うれしい反応が続いて何年も経過したとき、娘が大学で口腔外科の大学院で顎関節の研究に従事。ある一言で目からうろこ。-----

 田舎の歯科医院にもかかわらず高額な歯科専用のCTを導入。しかし読影はCTでの情報量は平面のレントゲンとはまるで異なり、莫大なので読影は娘が大学で研究をしていたので教わり、また多数の症例を治療して、ほとんど理解できるようになりました。しかし今でも少しおかしいときは娘に読影を依頼して個人の先入観をなくして、たくさんの目で観察するようにしています。

ここがチーム医療のすばらしいところ。中国の独裁共産党の在り方とは根本的に異なる部分です。

最近ある人がネットで、日本の電器製品が世界で見られなくなった、原因の一つは日本の開発は、盆栽の栽培のように、減点型完ぺき主義、海外の企業は加点型完ぺき主義であると言っています。日本は語学も完ぺきを求めてあまり話ができない人が多いようです。大学時代、工業高校なので殆ど英語を勉強していなかったので高校生と一緒に英会話の学校で勉強していたので、加点法を人生、仕事の中で実践していたこと、自分にとって語学はあくまでも手段。不完全でも段々と完成系に近づければOK、仕事も論文を真に受けて最初から完成を求めないことが顎関節症の対応に大いに役に立ちました。

 崩れた咬合基準の再現は本当に理論と、たくさんの経験が必要なことも事実です。

 昔教授が言ったことが、まさに的を射ていたこと。

おそらく教授は、多くのレントゲン画像から関節の変形を理解して仮説を立てていたと思われます。CT開発に携わっていたので教授の先見性に改めて脱帽です。

 学生時代とてもユーモアのある授業で、いつも意表を突くような話をしていたことが昨日の様に思い出されます。今回のコロナ時間で写真の整理をして、すべてデジタル化しました。アルバムを捨てると同時に今まで忙しく当時の写真を殆ど見たことがなかったので整理し改めて、たくさんの事を教えていただいた教授陣に、ありがとう、と言いたいと思います。コロナ時間で学生時代を思い出し教授の一言に懐かしさから筆を執りました。

 


先頭に戻る



Vol 69 《武漢肺炎と歯科医療(1歯単位と1口腔単位)》

.
武漢肺炎で世界中が大騒ぎ。日本では感染者が...というが細菌、ウイルス学を学んだ者からすると、これは患者数である。感染者とは、感染しても症状が出ない人も存在するので正確な数は誰にも分らない。しかしテレビが感染者というので医療に携わっている人間からすると違和感を覚えます。これらは水面上を症状の出た人、水面下を感染しているが症状の出ない人と考えると理解しやすいと思います。

 これは、歯科医療も全く同じことが言えます。歯を失う2大疾患、ムシバ、歯周病は慢性の疾患で通常水面上に症状が出ないと治療しないことが歴史的に見てもほとんどです。特に歯科医師が少なく患者さんが巷にあふれていた時代は仕方がなかった。この症状が出ない水面下での歯科疾患の治療はとても難しいからです。水面下での病気の活動が歯周病などでは、体力低下や噛み合わせの悪さが長時間続くと症状を出ます。歯科では、この水面下の治療がとても難しい。痛くなってから来院するように言われたという患者さんからの証言は過去に多数経験しています。だから歳を重ねると、いくら歯医者に通っても歯が無くなります。

 学生時代、これからの時代は1歯単位ではなく1口腔単位での治療が必要だと習いました。だから症状が水面上に出ないうちに口腔の検診が必要なのだと習いました。口の中は上顎と下顎に歯が顎骨に根を張って並んでいます。
 歯の一部が病気になったら、その症状の出た歯だけを治療するのが1歯単位です。では1口腔単位とは?

 上下の歯牙をセットとして処置する方法です。水面下での治療がとても大事になります。しかし1口腔単位での診断処置は残存歯の全体の噛み合わせのバランスが必要で診断はとても難しいです。

 ですから痛くなくても小さいムシバ、初期の症状のない歯周病を早期に治療する必要があることは、だれでも理解できると思います。
 しかし、患者さんが多く、歯科医師が少ないときの治療が一般化すると、いくら1口腔単位といっても、政治改革と同様に、なかなか実現できるものではありません。来る日も来る日も痛い歯の処置でアップアップの歴史。ですから歯科医療とは1歯単位で治療するものだという事が患者さんの一般常識になっています。
 そして水面下に隠れている歯科疾病を治療するには、かなり長い時間の説明が必要になり、診療する時間が取れません。収入に結びつかないし、痛くない歯を処置するとクレームがつくし、多くのスタッフが必要になり面倒なので今まで通りで良いか、となるのも理解できます。(水面下での治療をすると歯が残り、医療費が激減します、長期の経験から)

 結局昔からの1歯単位の治療から脱却はほぼ不可能になります。その結果、1歯単位で長期に治療を続けると、多くが治療とは歯を被せること,という認識が患者さんの口の中を長期間観察した結果理解できます。その為全体のかみ合わせが狂っても、若いときは歯周組織が強いので顎の関節がそれらの狂いに少しずつ対応して変形させてバランスをとるようです。しかし年齢が40-50歳過ぎると、いろいろな不定主訴が現れる。多くは歯科医院に来院せず歯科以外の部門で処置を受ける事実、今までたくさん経験してきました。

 さらに日本人の平均寿命が延びたので、昔はさほど問題にならなかったようですが加齢とともに体力の低下で頸部の筋肉に色々な症状を生ずるようです。

 その中に、どこの歯科医院に行っても何となく良くならないという人を今までテレビ出演後に多数経験しました。これらの原因は1歯単位での治療に起因する様です。

 調べると全員が噛み合わせに問題を抱えています。以前から理解をしていましたが放映後、短期に膨大な数を処置してクリアーに理解できるようになりました。 噛み合わせは、1本の歯の虫歯治療後に、詰めても被せてもトラブルの原因になります。しかし噛み合わせのバランスが狂っても、その狂いをあごの関節と筋肉が脳からの命令で、それに合わせようとします。ですから患者さんによっては歯を作って、当初はおかしいと思っても、そのうちに慣れてくる、しかし実は多くが狂った噛み合わせを調整するために関節を壊しながら又筋肉が脳からの命令でバランスをとるために顔を曲げたり、その状態を補正するために頬杖を突いたりしてバランスを補うようです。

 一度噛み合わせを狂わせると軽度ではレントゲンで分かりません、しかし大きく狂った噛み合わせはレントゲン画像で、正常な噛み合わせと比較すると素人でも明らかに判断することが可能になります。

 ここからが問題です。一度狂った噛み合わせをもとに戻そうとすると一時、不定主訴を訴える患者さんがいます。開業当初はこの現象が理解できず友人の脳外科からのアドバイスを参考に、いろいろ仮説を立てて、さらに10年以上前からCTを導入して顎の関節を調べると、なんと噛み合わせの問題と顎の関節の変形に大いに関係していることが判明してきました。

 そのために噛み合わせを治療する過程で、顎関節の間に入っているクッションがダメージを受けていること、関節頭、それを受ける脳底の骨の変形など判明。さらに治癒する過程で長期にわたり関節の位置が変化して噛み合わせが変化すること。しかし、それを丁寧に咬合のバランスを取り直すと噛み合わせは安定すること。いったんつぶれた関節の円盤は、なかなか元に戻らず説明したにもかかわらず変化の過程で患者さんからクレームがつくことがあります。他院に原因があるのに、なんで自分が責められるのかと大いに悩みましたが顎の動きを4000例以上経験したので信念をもって対処した結果、最近は殆ど問題なく解決できるようになりました。

 これは1歯単位で治療をしていると、ほとんど理解することが不可能と思います。

 幸い後藤歯科では技工士、衛生士と、チームを組んで問題に取り組んだ結果、コンピュータの力を借りてほぼ確立しました。
 また、患者さんはドクターショッピングを繰り返すので実態を把握するのはさらに困難になります。

 しかし、これらの事実は殆ど教科書にはなくエビデンスがないということで簡単に却下されそうです。慎重に診断をして、データはコンピュータで客観的に、また歩行との関係も理解できるようになり歯科医療の奥の深さを実感します。
 今まで多くのかみ合わせに問題を持っている患者さんを治療して、人によっては関節の位置の変化が4-5年で安定したケースも有り最近は定期検診で来院すると本当に治療を受けてよかったという患者さんが増えてきました。(巷では薬漬けになることがあるようです)

 これらのノウハウは入れ歯にも応用できるので治療の予後を長期観察すると、この考えは問題が無いと確信しています。神様ではないので、まだ何か問題点があるかもしれませんが科学の進歩は今ある現実を良く観察して、そして少しずつ、我々の先人が積み上げた上に成り立っていることを実感する今日この頃です。ウイルスと人類は共存して生きてきているので、いずれ今回の武漢肺炎は収束するものと思いますが、お互いに気を付けたいものです。



先頭に戻る



Vol 68 《AIと歯科医療》


最近マスコミで、AIのことが良く取り上げけられます。コンピュータの知識の少ない方はAIというと何でもできるという錯覚を待つのは仕方がないことと思います。
 昔、母校の歯科大学のレントゲンの教授はとてもユーモアを理解する先生で、当時CTの開発に携わっていました。ある時、授業の中で最近のマスコミは困るんだよ!
CTで人体の中に隠れている病気がすべてわかるような、また、もうほとんど開発が終わって、すぐにでも実用になるような報道があり困っている。現実は、いろいろな細かい問題をクリアーして研究をしていかないと製品にするのはとても難しい。というような話をしていたことを思い出しました。

 最近、OSのXPで構築したソフトとデータを最新のW-10にコンバートを依頼しました。プロからAIはマスコミが言っているほど内容は易しくない、難しいものだという意見を聞きました。個人的には最新のコンピュータは昔に比べると計算がとても速くなり、大容量を素早く処理することが出来るようになったと自分のマシーンからも実感します。

 しかし、しょせんAIも緻密なデータを人の手によりに入力して、そして計算させて仕事をさせるわけです。自分の専用のマシーンもたくさんのデータを入れて仕事をしていますが、人間の頭で考える以上なことは不可能と思います。(将来は分かりませんが)

 ただ、確実に言えることは自分が入力した書類、歯科のすべてのジャンルのアイディア、自分の文章、各治療部門の問題点を膨大な数、毎日入力すると後で整理すれば、歯科医学的に利用価値の高い情報になりつつあることは間違いありません。

 毎年、記憶力が落ちてくるので、その部分を短時間のうちに自分のデータベースから、記憶をしなくても簡単に取り出すことが可能で、これは、とても便利です。昔から自分がコンピータを使うなら、自分の脳みその延長線で利用したいと自分なりにシステムを組んできました。(昔読んだ本でユダヤ人はいろいろなトラブルを全て記録して、後世に伝えてその情報を活用する)計画通り最近はシステムの構築はほぼ完了しました。(個人が使うデータなら十分な感じです)

 結果的に、ほとんどの資料は忘れることができるので、頭の中がいつもクリアーになりました。大企業と異なり個人レベルで院内にミッドレンジのサーバーを設置して運用するには一人では不可能です。院内に人材を教育してLANマネジャーを配置して管理に当たっています。スタッフをマルチに働いてもらうことで出来る限りアウトソーシングを避けています。内部のシステムは自分で考え、どうしても個人レベルではできない部分のみ、専門家に依頼しています。もし、すべて外部に注文したら零細な後藤歯科医院は直ちに倒産するものと思います。

 また、院内のLANは外部と遮断して、外部には別回線で外部専門のコンピータが対応しています。

幸い、我々の仕事は院内で完結できることが殆どなので、仕事の内容をよく把握して、その部分をコンピータにさせことで出来る仕事は、少しずつ試行錯誤を繰り返してコンピュータ化してきました。自分の経験からコンピュータに最初から、完成を求めると永久にそのシステムは出来ないと思います。頭で考えたら直ちに実行(多くの失敗をしました)。

 些細な、出来る部分から少しずつ根気よく積み上げ(システム作りの経験を積む)が必要です。歯科界での前例があまり無かったので歯科以外のジャンルの展示会に内外を含めて出向き情報を収集してきました。

 このようなことを書くと全て個人データがコンピータに入っているものと思う人が多いのではないでしょうか。 しかし、ほとんどの人が利用する住所録はいまだにカードを使っています。それは、アクセスがとても早いし、いつでも変更が可能で場所はさほど必要がない。とても便利です。年賀状は手で一枚一枚、相手を思い出しながら書きますので、以前にソフトは購入したが結局カードを利用しています。

 コンピータにすれば、全て便利かというと情報量の少ないものは、カードのほうがとても便利です。しかし、患者さんのデータは膨大なので当然コンピータに仕事させます。

 ネットは電子メールをするだけで、その他のゲーム、ラインも、ほとんどしません。

なぜなら人生で持ち時間がだんだん少なくなるので、自分が一番面白いものに時間を使うようにしています。 一代でシステムを構築してきたので、いつも分単位でスケジュールを組んで構築をしてきたので、無駄な時間を使うのは、とても今でも罪悪感を感じます。(少し仕事中毒?かも)しかし、院内のシステム構築、スタッフの教育等はとても奥が深く些細なアイディアも形にするオモシロサはお金では買えません。知的好奇心を刺激するので、年を忘れて没頭できるので当分この部分には定年は関係ないような気がします。(ボケたら別ですが。)

 マスコミは歯科の技工物はCAD-CAMの出現で技工士の出番がなくなると、週刊誌にも書かれて、そのせいか技工士のなり手がいなく、現在はある意味歯科界の危機と思います。しかし、顎の動きを正確に咬合器(以前に書きましたので参考まで)で再現すると、いくら機器が進歩しても、人間のあの精細な咬合を再現できるとは思いません。(顎は車の部品と異なりファジーだからです)技工室と共同作業を続けて時間の経過とともにCAD-CAMは咬合の理論をよく理解してからの使用の必要性を感じます。

 しかし、精密に咬合器で顎の動きを再現して理論を理解すると、以前に書きましたヤバナ法のように、利用できる部分が見えてきて、いずれ効率を考えた新しい機器とミックスした仕事が構築できるよう計画をしています。そのためには技工士になりたい人で後藤歯科の技工に興味を持つ若い人がいればぜひ一緒に仕事をしてみたいものです。ただし今までの古い技工を頭に描いたら後藤歯科の技工は不可能と思います。今までの技工の常識を持った人は続きませんでした。

 ぜひ、なり手がいないのは逆に言うと競争相手がいないということで技工士さんの卵には、とりあえず見学だけでも大歓迎です。転職してコンピータを絡めた新しい歯科医療システムを研究してきた歯科の先陣として、自信をもつて咬合の不思議さ、面白さを伝えたいと思います。

 ちなみに、マンツーマンでの教育が一番効率良く仕事を覚え楽しむ最大の近道です。技工士の働き方改革はこの方法以外に考えられません。   



先頭に戻る



Vol 67 《ドローンで見えない口の中》


 前回ドローンで口の中を観察したら----という、いくつかの現象をレポートしました。
今回は、そのドローンを口の中に飛ばしても見えない、大事な働きをしている、神経、血管、筋肉などについてレポートをしたいと思います。

 口は以前にも書きましたように生命維持をするのに必要な食事、通信の手段の一つとしての声を出すのに大事な働きをしています。歯科医学は、主に見える歯を対象に進歩してきました。大まかにいうと歯が無くなった後どうするかの段階から進歩してきました。

 しかし、歯医者が増えてくると抜かれないようにするためにはどの様にしたら良いのか?
8020運動のように発展するのは自然な成り行きと思います。しかし、残念なことに現行の歯科保険制度は今でも抜いた後どうするかが基本になっているようです。それは仕方がないこととして、できる限り歯を保存し、人生100年時代に対応する哲学を持つ必要性を以前に書きました。

 見えない部分のムシバ、歯周病も本格的に歯を残そうとすると、かなり難しいです。
小さなムシバは観察すれば自然に治るという学者もいるようですが、論文は口の中の些細な一部をとらえて論ずると、大局的に口の中を観察するのとでは、全く異なると思います。歯を残すのは28本の歯をセットとしてとらえる必要があります。例えばカニの足のように各部が別々な動きをするのとは異なります。この違いをよく理解しないと人生100歳時代に対応するのは難しいと思います。ですから、コンピュータを利用した長期の経過の観察が必要です。病気の治療と、どの様にしたら長生き出来るのか?という事は異なると思います。
 歯の治療も全く同じことが言えます。
レントゲンは関節のCTを含めてこれらの課題を解決するのに、膨大な情報を得るのに有効です。(画像を読めるかは別として)
当医院では、歯科用の本格的なCTを導入して10年以上が経過しました。咬合器に顎の動きを再現して機械上の異常とCT画像から見た関節の変形にとても関係が深いことが判明しました。そこから今まで咬合器上で理解できない沢山の知見を得ました。総義歯で三日月のようなあごが突然戻り、デンタータス(咬合器のメーカー名)は、計り知れない多くの情報を我々にもたらしました。しかし、この機器に興味を持つ人が少ないのは不思議でなりません。以前に国際学会で知り合ったデンタータス開発の国スウェーデンの歯科医師に聞いたところ難しいので使っている人がいないという返事でした。これだけ役に立つ機器を使わないのは今でも不思議でなりません。時々歯科医師にそれとなく話を聞くと、心の底では何となく咬合は出来たら避けたいような話を聞くことがありますが、咬合は毎日の診療で、詰め物一つでも関係ありますが、処置後に症状が出る確率が低いのですが、それでもなんとなく咬合は敬遠されているようです。

これが原因で患者さんとのトラブルが多いのも理解できます。人によっては最初から治療しないほうが良い、トランプのババのような扱いをしたほうが良いという話も、当医院の今まで受けたクレームから想像できます。最近は咬合学的には治療可能でも、危険な症例も理解できるようになりました。

しかし、咬合のわずかな異常、ひどい異常でも、脳から多くの信号が顎を動かす筋肉に命令を出し何とかバランスを保っています。

しかしある日突然に症状が出現する。そのおかしな顎の位置をもとの正しい位置に戻そうとすると治療過程で、また患者さんによっては不定愁訴でクレームになる可能性が高くなる。だから誰も治療したくないのも理解できます。テレビ出演後、多くのトラブルを抱えた患者さんを治療してからよく理解できるようになりました。また歯科以外に医科を受診して、中でも頭痛を主訴にかなりの患者さんが脳外科を受診するようです。多くの症例を友人の脳外科医から紹介を受けて治療。術後の症状の変化は脳外科医がジャッジして良好な成績を得ています。多くの筋肉がヅレを有する顎をコントロールして生活しているようです。治療をするとよく理解できます。その咬合の多かれ少なかれ異常の軸は、左右の関節になるわけです。
歯科が影響を受ける主な神経は三叉神経です。これは、ひたい、上顎、下顎に存在して痛みにとても関係しています。ですから下の歯に原因が有っても、実は放散痛で上の歯が痛い、片頭痛がするなどで経験の少ない歯科医師が誤診することも事実です。友人の脳外科にも受診することがあるようです。時には患者さんが間違いなく上と言い張りますが、実は下の歯が問題なことが多々あります。

 脳に問題があると、口は動かすのに、たくさんの脳の部分を使っているので、わずかな脳の変化も口に症状が出ることがあります。脳外科医から色々教えていただきました。
 歯科との診断の違いは、歯科は殆ど見えるので、考えなくなる癖がつくかもしれません。脳外科医は脳内が見えないので、細部の情報を的確にとらえて、CT,MRIで診断の補助にしているようです。

口腔外科では神経、血管は走行する位置が微妙に異なるので、時には下顎埋伏歯の抜歯後に、下の唇が痺たり、血管の損傷でかなりの出血を経験することがあります。顔かたちが異なるように、バリエーションが多いこと、多数の手術を経験するとよく理解できます。車の部品と違うことを実感する瞬間です。

学生時代にご遺体を解剖して、そこで位置を確認したが、人間は本当にバリエーションが多いです。顔かたちが異なるように内部の構造もかなり位置が異なります。そこが噛み合わせと同様難しい部分。又、口の中の感覚はものすごく適応範囲が広いです。例えば、くさい部屋の中に入ると、だんだん匂いが気にならなくなる。一回匂いを全て消し去り、そこにわずかなにおいを入れると、直ちに感ずるわけです。噛み合わせも、全くこれと同じことが起こります、一回噛み合わせのバランスを整えると、その後、あごの関節のクッションがわずかに変化すると、直ちに噛み合わせの異常を訴えます。総入れ歯でもバランスを精密に整えた入れ歯は、普通の歯の様に感じることが可能となることが、長期の経過から理解できるようになりました。

しかし患者さんのかみ合わせがかなり狂っても、それに対応して顎を横に曲げたり、体を曲げたり、片方の肩を落としたり、頬杖を突いたり、無意識のうちに脳からの命令で、いろいろな筋肉を駆使して対処するようです。最近の高度な歩行を測定する機器からも、体のフラツキと咬合の異常を確認できます。歯の治療に使う機器ではないが、それらを応用して咬合と歩行の関係も理解できるようになりました。かみ合わせを構成する要素は多岐にわたるので、噛み合わせの学問は訳が分からなくなるのも理解できます。正常な咬合を阻害するファクターがものすごく多いこと。

絡まった糸のように、一ずつ解すと、後は楽になる。ここが教えるのに難しい部分。咬合は歯科医療の基本、勉強したい人が現れることを期待して原稿を書きました。         質問大歓迎です。



先頭に戻る



Vol 66 《ドローンで診る口の中》


 本日は、超小型ドローンで口の中を探検してみましょう。

先ず大きな前歯の場所から進入。あっという間に気道の入り口まで行ってしまいました。何とか踏み留まりました。この患者さんは鼻が悪く、口で呼吸をしているようです。この現象は口が渇いたり歯肉が唾液で湿らないので歯周病になりやすいです。原因は鼻が悪い、または噛み合わせの原因も多いです。以前書きました顎のヅレの中でも上下にヅレが認められるケースです。舌の上に大きな東京ドームのような空間が有ります。

 そこから下を眺めると、下あごの大きな歯の通常親不知を除いて奥から2番目の歯は、とても大事な噛み合わせのバランスを取るのに必要な歯です。ですから最初に生えてきます。(6歳臼歯)又、最初に生えるので多くが最初に抜かれる可能性が高くなります。

 診てみると奥から二番目の歯は、やはりすでに抜かれています。そこにブリッジが装着されています。良く観察するとブリッジの中の歯は元の歯より、かなり小さいことが確認できます。

 そうです、学生時代、無くなった歯を作るときに両サイドの歯に負担を掛けないように小さく作ると教わりました。 

 医局員時に各科の歯科部門を経験しましたが口腔外科が長く当時開業医では一般的では無かった歯周外科の手術を多数経験しました。

 師匠がアメリカに行き当時最新と言われた歯周外科のノウハウを駆使して手術した経験から真ん中が小さいブリッジは両サイドの歯の付け根の部分の骨の消失が著しいことに気付きました。この原因は?

反対側の同部位に歯が有り、それを観察するとヒントが有ります。大きさが異なります。この骨の消失した部分にいくら再生を試みても意味が無いわけです。歯の形態に問題が有ります。咀嚼した時にこなれた食片は歯と歯肉の間に入り込みます。

 しかし天然の歯は、歯がお尻の様に出張っているので、咀嚼時の食片を歯と歯肉の間に入らないように防護しています。

 歯は、隣の歯と互に肩を寄せ合っているから強いのです。その肩をつけている歯をよく観察すると隣接する歯の関係はお互いが扇のような関係を保っています。実は、この関係こそが根の周りの顎の骨を保護するとても大事な働きをしています。ブリッジが入っている隣接する舌を観察すると噛んだ跡が見つかりました。

 最初は少しでも、何回も噛んでいると歯肉が膨れて噛みやすくなります。細胞が変化してガンの原因になる事もあります。当医院でも今までに口のなかのガンを多数見つけた経験から、この状態はとても危険です。
それは、上下の歯の関係はお互いに少しヅレ、ひさしがあります。それで舌、ホッペを噛まないようにしています。

 患者さんによっては舌の真ん中近くが膨れています。これは、もしかしたら噛み合わらせが悪いので寝ているときに噛んだのかもしれません。舌は噛み合わせが悪いと、寝ているときに無意識に左右の関節と、左右の第一大臼歯で4点のバランスを取る為に、そこに舌を挟むようです。ですから第一臼歯を抜くと夜そこに舌を入れてバランスを取るようです。多数の噛み合わせ治療してバランスを整えると噛まなくなります。多くの症例から確認することが出来ました。
バランスについては以前に書きました、ご覧ください。この様なケースは左右に顎のヅレが多いケースが認められます。

 天然の歯の根は木の根の様に足を開いて体重を支えるくらいの噛む時、あらゆる方向の力を顎の骨に分散しているわけです。
 ある有名なノーベル賞受賞者が論文で有名なネイチャーの中には相当数信頼に欠けるものが存在する、という事を書いています。さすれば歯科の論文の中には定説といえども、かなり信用できない事実が有ってもそれは仕方がないものと思います。しかし、教科書から外れた事を言うとマスコミからも同業からも仲間扱いされないのが今の日本の空気です。科学は空気でするものではないと思いますが

以上の事実から、
  「ボーと歯の治療をしてるんじゃねーよ」チコちゃんに叱られそうです。



先頭に戻る



Vol 65 《カニと卵》


どのような料理が出来上がるのか?テレビでは一般的な話題? しかし本日は入れ歯の設計をするときにとても大事なファクターであることが後で理解できると思います。
 入れ歯を入れている人は、世界中にどの位いるのかわかりませんが、かなり多いと想像できます。毎日海外のテレビニュースを見ていると、発展途上国では入れ歯を入れていない人が多いように見受けられます。

 以前にボランティアで行ったフィリピン、タイ、ミャンマーで成人の口の中を診る機会が有りました。ミャンマーでは歯を作る技工所も見学しました。30年くらい前に学会で参加した時に、アメリカの大きな技工所を見学、中国しかり。どこも大勢で分業して歯を作っていました。営業、ワックスを盛る人、鋳造をする人、研磨する人、事務をする人など。 学生時代、大学の隣のベースでベトナム戦争が激しい時でしたが、若い兵士の総入れ歯に驚いたことが有りました。アメリカの治療費は昔から高いからそうなったのかもしれません。詳しいことは歯科の歴史家でないので良く分かりません。

師匠の講演で、入れ歯の設計のアンケートを取ったら、アメリカでも殆ど技工所任せだという話を聞いたことが有ります。

 転職して50年以上歯科界に身を置いていると、下請けに注文すると、一見合理的に見えますが取り外しの入れ歯の設計は歯科医師が直接口の中を診て設計する必要性を感じます。口の中は10人十色、条件が全く異なるからです。

 また、入れ歯の設計を色々な大学の専門家に依頼したら、皆異なる設計をしたという話を聞いたことが有りました。

 本人の顎の形、関節の大きさ、異常な骨の隆起、(噛み合わせが悪いことが多い) 噛みしめる癖、患者さんの関節の大きさ、バネを掛ける歯の根長、又レントゲンから顎の骨がしっかりしているのか等、型をとった模型からではそれらの情報はわかりません。

 入れ歯で大事な要素をいくつか挙げてみたいと思います。

1、口の中は通常3回の食事で毎回汚れます。ここで最初の話に関連します。カニと卵とでは、どちらが汚れは付きやすいのか? 明らかにカニですよね、実は入れ歯はまず汚れが付きづらいシンブルな形が要求されます。(高齢者では肺炎などと関係)

2、次に大事なのが右で噛んだ力を左側の歯と骨に伝える工夫が必要になります。ですから、入れ歯を手で右と左の端をもって曲げるとフニャフニャした入れ歯は問題です。理由は反対側に力を伝えないと、顎の骨の消失、バネをかけている歯がグラグラしてダメになるからです。歳とは関係ありません。(ですからは片方だけで反対側の歯列に力を加えない入れ歯は、入れ歯を誤飲の可能性が大きいし、安定しないことがほとんどです。) 

3、噛んだ時の力は、歯と歯を失った顎の骨で自分の体重に近い力を受けます。噛んだ時に歯と歯肉では入れ歯の沈下が異なります。すると当然歯の沈下は少ないので、歯を軸に入れ歯の回転が生じます。この入れ歯のわずかな回転のバランスを取ることが、残っている歯と骨を保存するのに大事になります。これらを考えて設計すると、一つの症例で色々な設計のパターンになることが無い。ベストなものは一つになるわけです。これらを考えて作らないと残っている歯が次から次にダメになり、歯が無くなるスピードが上がるし、さらに顎の骨が消失します。

4、時には技工士と相談して、材料の強度、審美など制作サイドの意見も必要になることが多々有ります。したがって技工士との連携はどうしても必要になり下請けに出すことは不可能です。5、噛み合わせの設計、共同作業は計り知れないメリットが有ります。これは、一緒に仕事をしないと成立しません。この様にして作られた入れ歯は何年たっても、義歯の具合のよい人が多い。また、体も健康な人が多く、人によっては左右で自分の歯より入れ歯で噛んでいる人も多く見受けられます。

歯科医学は事実の確認(エビデンス)が必要で長期の経過を観察する必要が有るわけです。なぜなら戦後に50年足らずだった平均寿命がなんと80歳を超えたので新しい歯科に対する哲学が必要になります。これを学ぶのに講習会などでは習得は不可能です。
歯を作るのに下請けに出したら? 働き方改革をしたら? 技工所はどこかで手を抜かないと経営が成り立ちません。今の日本は経営がうまくいかなくても規則を守ることが大事のようです。医療も患者さんの命より規則が大事なことは、以前に土俵で倒れた人がいた時に実証済みです。ですから技工所をたたむ人が最近増え、また技工士のなり手がなく、有名な学校も閉鎖に追い込まれています。

 若い人は今後30-40年経過したら大変かもしれません。今の世の中は30-40年前の大人が作った社会で若者が飯を食っているわけです。

私の時代では明治、大正、昭和一桁が作り上げた社会で生きてきました。

大体人生の仕事のサイクルは、30年-40年と言われています。ですから会社も、歯医者も時代の変化に対応しないと30年位でダメになっているようです。その社会のパラダイムの変化に早く気付くことが必要です。平均寿命が50歳を越したのが戦後間もない頃です。

 今は人生100年時代と言われます。昔と考え方を変えないと、失った歯を補うのは難しい。また、50歳を超えると身長が低くなり、顎が小さくなり噛み合わせに大きな問題を起こします(長い間の観察から)。 これらの現象を理解して噛み合わせの理論を十分に理解しないと臨床でトラブルが起こる確率が高くなりそうです。100歳時代の歯科の哲学を持つと歯科医療は本当に奥が深く、楽しい仕事になります。また、患者さんが人生の後半で楽しい食生活を送る大きな手助けが可能になり、お互いがウインウインの関係になります。 令和2年、奇人変人と言われた歯科医師からのメッセージです。         

最近患者減で歯科界では色々なことが言われています。歯科医師が増加したからそのような現象が生じたと思う方がほとんどだと思います。確かにそれもありますが、転職して歯科医師になり、長い間、医局生活をして、その後開業して42年ほど最前線で臨床経験を積んだ経験から今の現象を分析すると、それはもしかしたら違うかもしれません。

 歯科界は、戦後歯科医師が極端に少なく、患者さんが多い時代が有りました。その時に国は全国にたくさんの歯科大学を誕生させました。そして時間が経過したら、今度は歯科医師が多く、患者さんが歯科医院を選べる時代になりました。ここが大事な部分。今までの歯科医療は患者さんが多い時代のやり方がベースになっています。ほとんどが主訴のみを対象に治療する。(だからいくら歯医者にかかっても差し歯、総入れ歯になる確率が高い)その時代は仕方がないものと思います。そして、歯科医師が増えると今度は一度他院で治療したが、予後が悪い患者さんが来院し治療するわけです。ある意味最初からトラブルを抱えた患者さんが対象になります。ここが難しいところ。それには理論的にその状態を把握して口腔全体の治療計画が必要になります。また、咬合の理論を正しく理解していないと治療が難しくなります。それらの問題を対処するには1人親方ではなく、歯科医師、衛生士、技工士、受付とワンチームでの対処が必要になります。また、歯を作るのに技工所に出すという事は時間、書類の無駄、技工所の交通事故のリスク等が多く、働き方改革のためにも無駄を省いて患者さんの声を直接技工士が聞いての対処が必要になります。徹底的に無駄を省く。(普通の企業では当たり前なことです)また患者さんの長期の予後のデータも院内のサーバーを介して保存の必要が生じます。(それから新しい方法が生まれます)

文献の保存、患者説明にもコンピューターの院内ネットは絶対必要になります。書類では不可能です。これらのシステムを完成させたのが後藤歯科医院のシステムです。ほぼ完成、その結果多くの患者さんに支持されています。それにより例えば全く噛めない総入れ歯も4-5時間で柿ピーナッツなども食べられるように出来る様になりました。研修医のトレーニングは、症例が多くないと効率的な研修は不可能です。


 この記事に疑問のある方は一度、見学だけでも意味が有ると思います。歯科に問題意識を持っている歯科医師には、とても有意義だと思います。過去に1時間2回、夕方10分、その後30分、合計4回テレビで放映された経験が有り。しかし誰も歯科界から見学者が有りません。(患者さんは全国から集まりました)それは今までのシステムと異なるので理解しがたいのでは?

 私の言う事は5-10年たつと良く理解できます。しかし、その時になって、いくら講習会に通っても出来ないと思います。50年も前から多くの歯科医師が同じことを繰り返しています。歯科医師の一生は最初に勤務した医院の哲学でほぼ決まり。自信をもって言い切ることができます。有名な歯科界の経営コンサルタントの話。予後を見ない歯科医療は全て成功、しかし予後の悪いケースは全て他院に流れます。特に今後は幾らインプラントをしても、咬合の問題でトラブルが続出するものと推察します。(現に起こっていますが) 全ての歯科教育はマンツーマンでの指導が必要です。

 さらに、究極の医療安全は研修をする場所です。近い将来大災害が発生(洪水などはすでに起こっています、NHKでも最近地震の番組を組んでいます)その時に通勤の交通の便より自分自身の身を守ること、また患者さんの身を守ることが何より大事です。
 両親が関東大震災で体験したことを考えて、院内では大型の50kvの発電機、50メートルの井戸を完備して、いつ災害が起こってもスタッフ、患者さんの最低限度の安全が確保できるようにシステムを準備してあります。    

 人はオーバースペックと言います。近い将来これが本当にオーバースペックか?
証明される日も近いと思います。水害も、地震も被災して初めて理解する人が多いという事もテレビから推察されます。それは想定外? 違います、原発も人災です。災害列島に住む住人として、政府を当てにしないで自分の身は自分で守りましょう。

 この原稿は後藤歯科医院が歯科大学の研修施設なので、主にこれからの卒後研修医を対象に書きました。   



先頭に戻る



Vol 64《若い歯科研修医の為に》


最近患者減で歯科界では色々なことが言われています。歯科医師が増加したからそのような現象が生じたと思う方がほとんどだと思います。確かにそれもありますが、転職して歯科医師になり、長い間、医局生活をして、その後開業して42年ほど最前線で臨床経験を積んだ経験から今の現象を分析すると、それはもしかしたら違うかもしれません。

 歯科界は、戦後歯科医師が極端に少なく、患者さんが多い時代が有りました。その時に国は全国にたくさんの歯科大学を誕生させました。そして時間が経過したら、今度は歯科医師が多く、患者さんが歯科医院を選べる時代になりました。ここが大事な部分。今までの歯科医療は患者さんが多い時代のやり方がベースになっています。ほとんどが主訴のみを対象に治療する。(だからいくら歯医者にかかっても差し歯、総入れ歯になる確率が高い)その時代は仕方がないものと思います。そして、歯科医師が増えると今度は一度他院で治療したが、予後が悪い患者さんが来院し治療するわけです。ある意味最初からトラブルを抱えた患者さんが対象になります。ここが難しいところ。それには理論的にその状態を把握して口腔全体の治療計画が必要になります。また、咬合の理論を正しく理解していないと治療が難しくなります。それらの問題を対処するには1人親方ではなく、歯科医師、衛生士、技工士、受付とワンチームでの対処が必要になります。また、歯を作るのに技工所に出すという事は時間、書類の無駄、技工所の交通事故のリスク等が多く、働き方改革のためにも無駄を省いて患者さんの声を直接技工士が聞いての対処が必要になります。徹底的に無駄を省く。(普通の企業では当たり前なことです)また患者さんの長期の予後のデータも院内のサーバーを介して保存の必要が生じます。(それから新しい方法が生まれます)

文献の保存、患者説明にもコンピューターの院内ネットは絶対必要になります。書類では不可能です。これらのシステムを完成させたのが後藤歯科医院のシステムです。ほぼ完成、その結果多くの患者さんに支持されています。それにより例えば全く噛めない総入れ歯も4-5時間で柿ピーナッツなども食べられるように出来る様になりました。研修医のトレーニングは、症例が多くないと効率的な研修は不可能です。

 この記事に疑問のある方は一度、見学だけでも意味が有ると思います。歯科に問題意識を持っている歯科医師には、とても有意義だと思います。過去に1時間2回、夕方10分、その後30分、合計4回テレビで放映された経験が有り。しかし誰も歯科界から見学者が有りません。(患者さんは全国から集まりました)それは今までのシステムと異なるので理解しがたいのでは?

 私の言う事は5-10年たつと良く理解できます。しかし、その時になって、いくら講習会に通っても出来ないと思います。50年も前から多くの歯科医師が同じことを繰り返しています。歯科医師の一生は最初に勤務した医院の哲学でほぼ決まり。自信をもって言い切ることができます。有名な歯科界の経営コンサルタントの話。予後を見ない歯科医療は全て成功、しかし予後の悪いケースは全て他院に流れます。特に今後は幾らインプラントをしても、咬合の問題でトラブルが続出するものと推察します。(現に起こっていますが) 全ての歯科教育はマンツーマンでの指導が必要です。

 さらに、究極の医療安全は研修をする場所です。近い将来大災害が発生(洪水などはすでに起こっています、NHKでも最近地震の番組を組んでいます)その時に通勤の交通の便より自分自身の身を守ること、また患者さんの身を守ることが何より大事です。

 両親が関東大震災で体験したことを考えて、院内では大型の50kvの発電機、50メートルの井戸を完備して、いつ災害が起こってもスタッフ、患者さんの最低限度の安全が確保できるようにシステムを準備してあります。    

 人はオーバースペックと言います。近い将来これが本当にオーバースペックか?
証明される日も近いと思います。水害も、地震も被災して初めて理解する人が多いという事もテレビから推察されます。それは想定外? 違います、原発も人災です。災害列島に住む住人として、政府を当てにしないで自分の身は自分で守りましょう。

 この原稿は後藤歯科医院が歯科大学の研修施設なので、主にこれからの卒後研修医を対象に書きました。   



先頭に戻る



Vol 63 《イグノーベルと矢花法》


いよいよ来年は、オリンピックが始まります。前回の東京大会の時は電々公社に入りたてで、仕事が少し出来る様になった頃だと昨日の様に思い出されます。その後、歯科医師の道に転職。

 オリンピックの種目には色々ありますが、やはり日本では体操が人気な種目の一つだと思います。最近は体操の技能が進歩して、選手の名前がついた技を見ることができます。
その技はすごいが、アマゾンに生息するサルに比較すると、たいしたことが無いかもしれません。オリンピックを前にスイマセン!!今後、猿が1万年くらい後に人間より進化して、オリンピックを始めるかもしれません。その時にはサッカーの様に、手を使わない代わりに4足歩行禁止のマラソンなど結構盛り上っているかもしれません。

 後藤歯科医院も開業以来、患者さんの顎の動きを精密に咬合器(以前の原稿を参考にしてください)試行錯誤して歯を作ってきました。最初の頃は技工士も理論が良く分からず、教えながら顎の動きを精密に再現すると、歯の形態に問題が。歯の形態を整えると今度は顎の動きを阻害するし、技工士と一緒に夜遅くまで勉強したものです。歯科医療というのは、片方の条件を整えると、片方に問題が出ることが有ります。薬の作用、副作用も同じです。  歯科では歯をあまりきれいに配列し色を重視すると、時には歯を削り過ぎたり、相対する歯に対して顎の動きを阻害して結果的に歯の寿命を短くする。一見さんで、お金をもらったサヨウナラなら良いが、口の中に生涯自分の歯を使えるように目標を掲げると、なかなか奥が深いものです。

 先日テレビで手品のタネ作りをする人の番組が有りました。日本人は世界的に優秀だそうです。しかし、その裏で開発する人は、いつも膨大な時間練習と、雑貨店で売っている些細な品物からもヒントを得て、それをタネの開発につなげているようです。その努力はスゴイと感心しました。とても見ごたえのある番組でした。

 私も開業当初、週一回の休みには東急ハンズに通い、根の治療専用ワゴンの良いものが無かったので色々な小物を買っては試行錯誤を繰り返して試作し、設計して業者に特注しました。院内のコンピュータ-システムは電波新聞から情報を得て作ってきました。最近は、それらは、ほぼ完成したので買い物には行かなくなりましたが、昔の癖で何か歯科で使えるものがないかと無線、オーディオ部品の関係で秋葉原に行くと、今でも使えそうなコンピュータ類の小物を探しています。

 昔ソニーの創業者が技術者に、寝ているときはいつも隣にメモ用紙を置いておけという話を思い出して、自分もいつも枕元、トイレにメモ用紙を置いて、この原稿を書くのも、その中の一部からマジシャンならぬタネをキープしています。

 噛み合わせの治療も4000例以上経験して長期の経過、その中から疑問点を絞りディスカッション。最近は顎の関節に変形の著しい人(結構見かけます)左右の顎の極端に長さが異なる人などを除いて、CTを導入したことで噛み合わせを理論的に解決できるようになりました。

 その中から生まれたのが、当医院の技工士の矢花君が考案した関係で名づけたヤバナ法。

技工士が噛み合わせの理論をよく理解すると、技工室での無駄な作業が分かり、それを省いて歯科医師、衛生士と連携のもと4-5時間で総入れ歯、部分入れ歯も修理してかめるようにする技術です。その効果を調べるために毎回、柿ピーを出して咀嚼テストします。(あまりヒドイ入れ歯は再製作したほうが良い場合が有)

 応急的に噛めるようにする、とても良い方法だと思っています。

 結果は、患者さん最初は信用しませんが長い間、食べられないものが急に食べられて、
毎回驚きます。中には急に食べられるようになり食べ過ぎて下痢をする人もありました。 しかし、気の毒な事に、中には何年も食べられないので噛む筋肉が衰えて力が殆どでない人も見受けられます。しかし、3-6か月たつと見違えるように噛めるようになります。それと同時に顎の関節がダメージを受けていたので驚くくらい、噛み合わせが変化します。最近、多くの治験から問題なく解決できるようになりました。噛み合わせが悪いと、体を左右にゆすって歩く人や、片方に体を傾ける人。(全て噛み合わせが原因とは思いませんが、精密な機器で測定するとかなり関係が有りそうです)

 有る患者さんが今にも転びそうなので噛み合わせと、歩行について説明して次回、咬合を変えたところ関節の変化とともに後で不快な症状が出てクレームがついたこともありました。(顎がどの様に狂うか、どの様な症状が続くのか、以前に書きましたので参考までに)歩行はスムーズになったことを後で確認。

 老人が転ぶと多くが寝たきりになると先日の週刊誌の特集に出ていました。それらの関係はNEC、アシックスが開発した、歯科用ではないある機器を使うとフラツキのデータが出るので治療をしやすくなりました。他で話をしてもUFOを見た人が他人に話をすると誰にも信用されないのと似て、誰も相手にしてくれそうもないのが落ちです。現在しっかりしたデータを蓄積して理論武装しています。

  我々の業界でも新しいことを考えて挑戦すると、とても面白い人生が送れると思います。ちなみに当医院の技工士は患者さんの反応をじかに見られるのと、長期の経過をみられるので、満足度はかなり高いものと推察します。しかし、そこまで到達できずに挫折した技工士がいたのも事実です。昔、師匠から歯科界から誰もノーベル賞をもらった人がいないと聞いたことを思い出しました。
ちなみに、後藤歯科医院の法人の名前は、医療法人社団オリエントです。理由は西洋の論文は参考にするが、後は口の中を観察して仮説をたて自分たちの頭で考える。これが基本で名づけました。

 ヤバナ法は、もしかしたらイグノーベルの対象かも?

 先日そんな夢を見ました。  



先頭に戻る



Vol 62 《インターンシップとマザーテレサ》


インターンシップとは、学生が企業で就業体験をすること、実際に行われている業務を体験すること、社会で働くことのイメージをつかんだりビジネスで用いられるスキルを身に付けたりするもの、とあります。

 毎年当医院ではインターンシップを夏休みに受け入れています。
高校側の話によると、歯科関係で受け入れる施設が少ないようです。
 ここ数年数は少ないが毎年受け入れをしています。例年は3年生が来ますが、今年は、なんと高校一年生が日を異にして3名来ました。

 スタッフが治療室、技工室、受付その他の医院のシステムを説明、また、歯の治療は痛みが取れればそれでおしまいではなく、衛生士が20-30年、患者さんの口の中を管理して、それが人生の後半で無駄な医療費を使わない事につながるし老後のQOLが高まると説明をしていました。三人とも衛生士の仕事の現場を知りたいと、かなり遠方からも来ました。

 終了後、大変細かく丁寧な感想の手紙を頂きました。内容はかなり的を射た内容で感心しました。
一般の企業でも大学でインターンシップ後、社会に出る学生も増えているようです。
 しかし、先日ネットをそれとなく見ていたら、就職して3か月で退職した人の記事が出ていました。内容は、営業を希望したにもかかわらず、違う部署に配置され目立たない地味な仕事をさせられ、自分のイメージとは異なる仕事なので退職した、と書かれていました。しかし、どんな仕事も最初からバリバリ最前線で出来る仕事は、難しくなく、誰でもできて、それは当然競争が激しく賃金も高くないのが世界の常識ではないでしょうか? 長い間親の保護の元で生活していると、どうやら世の中は簡単にお金が稼げると思う若者がいても、それは日本の教育、スマホの成果? かもしれません。

 CSテレビを見ていたら、アフリカの移民は良い生活を夢見てヨーロッパに渡ったが、現実は想像を絶する生活で、マスコミが言うような性善説では語られないようなことが起こっていた。ようやく目が覚めて故郷に帰りたいがお金がない、中には運よくアフリカに帰れた若者もいたようです。又、勉強をしたくても貧乏で学校にいけない、あっても近くに学校がない。したがって2-3時間かけて毎日通学している発展途上国の若者。 以前に書きましたミャンマーで実感した学校に行かれる事をとても幸せに感じる子供たちの笑顔を思い出しました。実際現場を視察すると、日本がいかに恵まれているかをわかります。アフリカでは、気候変動で耕作地が乾燥して食料生産が十分に出来ない農民が多くいる現実があるのです。   

 最前線でバリバリ仕事をするには、芸能人も含めて下積みの生活は必ず必要なものです。下積みは目に見えない多くのことを習得できるものです。昔、師匠から便所の掃除をすると社会の全体像が見えてくるというような話を聞き、なるほどと思うことが増えてきました。(講習会を受けただけでプロのミュージシャンになった話を聞いたことが有りません。)     学生時代に家が歯科医院ではないので、歯科の実情を知りたく、歩いているときに歯科医院が有ると、スミマセン、学生なので抜去歯をくださいと言って中に入り見せてもらったものです。実は、内部の色々な機器、それらの整備の状況(もともと電気専門なのである程度判断が出来る) 院内の整理の状態、などを観察しました。 当時の歯科界を知る大きなヒントになりました。

 それが高じて大学の隣の横須賀ベースに入り、アメリカの歯科を見学して、カルチャーショックを受けたことは以前に書きました。

 今回のインターンはネットの記事の他の職業の大卒の人間より意識が高いと思われます。
 しかし、そのやる気の有る衛生士の多くが就職後、なぜ歯科界からいなくなるのか?
ビジネス書に1ブルーカラー(単純労働) 2ホワイトカラー(定型業務)  3ホワイトカラー(クリエイティブ)。これは1に能力がない、と言っているのではなく、役割の違いで人の優劣ではない。医療行為はどれかというと、3に分類されるものと思います。それらの役割の違いに全て同じ規制をかけると、今後医療に色々な問題が起こり、医療コストが膨張すると思われます。

  当医院でも出産後、子供が成長してから、患者さんの長期の予後を良くし、しいては人生の後半で無駄な医療費を抑え、健康な人生を送る人の役に立ちたいと、カムバックしたスタッフが現在の後藤歯科の有力なエンジンになっています。日本の昔からの良い部分(お互いに家族のような関係で和気あいあいと仕事をする)を全て否定して、西洋の悪い部分を真似する最近の制度に疑問を持ちます。自分が病気になったら?
 スタッフ一丸になって働いていますが、色々な厳しい現実に直面すると、和気あいあいという雰囲気を壊されて、零細な歯科医院は夫婦で仕事をしないと成りたたない? まったく仕事のできない新人を一生懸命教えて、開業以来家族の様に面倒を見ていた家内は一時失望していましたが、インターンを受け入れで、若者は、だめな人ばかりが目につくが、捨てたものではないことを実感しました。色々なことで裏切られた家内も、とても喜んでいました。

 一人では経営が出来ないので、目に触れない部分を家族で行い、家内は一度過労になりクモ膜下出血で倒れたことが有るので、人一倍、医療に関しては、スタッフに対して、気を使い、色々な良い条件で、とやってきました。しかし、最近驚くような価値観の持ち主に会い、さすがに精神的なダメージを受けたようです。しかし、今回のインターンシップの話で、ようやく元気になりました。
流れ作業の仕事と、医療を全く同じに考える最近の風潮に疑問を持ちます。医療関係者はいくら犠牲を払ってもよいというわけではありません。医療関係の仕事は、だから一般より、尊敬されている? 大企業も役人も零細企業も全く同じ規則を強要し最新の働き方改革で、定時になりました。本日の手術は時間がきましたのであとは優秀なAIロボットの出番です。(安全性は折り紙つきの福島の原発と同です) ではさようなら!!  これでは?
マザーテレサの仕事を世界が賛美するのはなぜ?



先頭に戻る



Vol 61 《卒前教育、卒後教育の違い》


 歯科大学に、ある講演を聴きに行きました。歯根の治療をするとき、長さを図るのに電気抵抗を利用して測定するという内容でした。学生時代に理論は分かっていたので、秋葉で部品を調達し自作して器械を作り、小遣いを稼いでいました。 理論が理解できれば使えるが多少理論がわからなくても確実に測定できるというので話を伺うことに。

 2つの周波数のインピーダンスの違いから測定すると判明して、頭がすっきりしました。また開発者の苦労話を聞くのも大変に勉強になりました。結論から言うと人との出会いで大きなヒントを得られたと言う話でした。自分の経験からも同感です。

 久し振りに大学に行くと咬合器を抱えた学生が誇らしげに歩いていました。彼らが使っている模型は、以前に書いたように顎の基準と歯の基準がぴったり合っています。しかし現実は顎の基準と歯の基準が一人一人の患者さんでは異なっています。(多くの臨床経験から)関節の基準を咬合器に再現するには、脳みそからの命令で色々な筋肉が邪魔をして簡単に関節の基準を確認するのは難しいです。そこに問題が生ずるわけです。 
 
 初めて歯科医学を学ぶ学生たちに教えるときには問題が有りません。しかし臨床では彼らが作った入れ歯では殆ど役に立ちません。

 以前に娘(口腔外科医)の同級生が大学時代とても器用で、親戚に頼まれて入れ歯を作ったそうです。それを歯科医師に渡し、見ていると、なんと精魂込めて作った入れ歯をバリバリ削られ、苦労して作った入れ歯の形が崩れ、以前に書いたように平らになりました。(理論的に作られた入れ歯は設計した形がそのまま残りますが....)
学生は激怒して失望したそうです。そのような話を思いだしました。
 まさに、この一例が卒前教育と卒後教育の違いをハッキリ表しているケースとして、
入れ歯を作るときに思いだします。

 私も医局員時代に色々な科を担当、中でも口腔外科が長かったのですが、手術をするときに、例えば埋伏している親不知を抜歯するときに、人によって位置が異なり、これらの対処の仕方はあまりにもバリエーションが多いので講習会などで習ってもほぼ不可能だろうと思いました。(4-5割は可能かも) 時には抜歯をするときに、顎の骨と根っこの伸縮性を利用します。それは抜歯後にその歯を元に戻すとしても、全く戻らないという事は歯の伸縮性と、骨の伸縮性が関係していることに気付かされます。この辺が問題になるわけです。先輩につきっきりで、このような場合にはこうする、この様なことが起こる可能性があると何回も教わりました。

 これが卒後教育だろうと思います。これを直接教わらず自己流でやったら、事故が起こる確率がとても上がるし時間はかかるし、何よりも患者さんの大切な時間を奪うという事になると思います。最初は医療の出来る人について素直にそれを自分のものにして、その中から自分なりのやり方を開発しないと人生の中でとても無駄な時間を費やすことになると思います。この年になると良く理解できます。医局員時代、全国から私より10歳くらい上の多くの歯科医師が集まり研究会をしていて、それとなく臨床の話を伺うと、やはり基本の大切さを実感しました。師匠から基本の大切さを指導されたので、ある意味人生10年くらい得したと今でも思っています。

 咬合論もその研究会で何回もヘタな司会をして理論的につるし上げに会い、自分なりに理論を構築しました。しかし開業して自分で実行すると、人の教育、患者さんの教育、医院のシステムを作ること、運営することがどれだけ難しいものかを今でも思いながら仕事をして、若い世代にノウハウを移行しています。

 歯科医師の増加により疾病のフォームの変化など、時代の変化を感じます。卒業した当時は、あまり歯科医院に受診したことがない人が多くいました。現在は一度他院で治療をして、そして何となくおかしいという患者さんを診ることが多々あり、ある意味、最初から大きな問題を抱えて来院するのでそれなりの知識技術を求められます。

 この辺が新しく歯科医師になった歯科医師の卒後教育の困難さだと思いますが新人の歯科医師はライセンスを取ると、何でも出来ると思う人が多いようです。

 しかし、5-10年と臨床経験をすると、だんだん周りに壁が出来て、それを打破するために多くが講習会(それらは殆どが卒前教育と同じ)に参加するようです。このパターンは50-60年前からあまり変化をしていないようです。
出来る人が講習会に行くならともかく、口腔内は性格を含めた人間の多用性により、臨床経験が少ない新人が講習会に参加しても得られる知識は表面的な部分しかないものと思います。パーツが同じ車の修理をするのとはまるで異なります。
 歯を残すための根管治療をするときに必要な解剖学も、多くの抜歯をしたことにより直接、根の先のバリエーションをたくさん診たので、治療するときに大いに役に立ちました。

 歯科医師は手先が器用と言いますが、これは殆ど関係なく診断能力で9割が決まりです。しかし、昔はいつも痛い歯ばかり処置せざるを得なかったので、10年20年先の診断の勉強は難しかったと思います。以前に視察で訪れたミャンマーの治療は殆どが抜歯でした。それが長く続くと抜歯の後どうするのかという学問になるのかと思います。ですから患者さんに話を聞くと、熱心に歯科医院に通ったにも関わらず差し歯、入れ歯、インプラントが増えるのも仕方がないものと思います。
なぜなら、会社と歯医者の収入体系は全く逆だからです。会社は不良品を作ると倒産。歯医者は? 現状の疑問をあまり新人に教えるとイヤミな年取った爺の歯医者と言われそうです。

時代が変わったと言いますが、幸いなことに人間の顎のパーツはコンピュータのOSの様にコロコロ変わらないので、知識の蓄積をサーバーに毎日入力して、若い世代に役に立つような仕組みを作るのが最近の仕事の大部分になりました。

 若者に知恵あらば、老人に力あらば。これがチーム医療の強みになるわけです。

 治療後、口の中は歳と共に驚くほど変化します。特にトラブルを抱えた患者さんの噛み合わせは、治療途中での顎関節のクッションの変化、年齢による顎の縮小、どれも長期の経過を観察しなければ理解できません。その時痛みが取れればそれだけでよいのか?
予後を見ない歯の治療は全て成功です。 
これが人生の後半で膨大な医療費を発生させる原因の一つである様に感じます。




先頭に戻る




前のページに戻る