名誉院長のブログPage5


名誉院長

名誉院長からのメッセージ

 

歯科衛生士

名誉院長からのメッセージ バックナンバー 《41~50》


50.《プライドと歯科医療》
49.《太陽発電とガス発電》
48.《規則と歯科医療》
47.《ムシバ予防とは》
46.《検診は何でするの?》
45.《業界用語と歯科医療》
44.《診療圏と歯科医療》
43.《電波新聞と歯科医療》
42.《日照不足と歯科医療》
41.《車と歯科医療》


<<《Vol 51~Vol 60》   ⦅Vol40~Vol31⦆>>


Vol 50 《プライドと歯科医療》


 社会人を1年で辞めて、思いもよらぬ歯科大学の学生になりました。家は農業と花で生計。全く別の業界に入り最初に感じたのは学生のプライドが高校に比べると、とても高いということを50年以上たっても鮮明に覚えています。そこで改めてプライドを辞書で調べてみました。誇り・自尊心・自負心などが書いてありました。当時自分の考えでは、まだ社会に出て仕事をしたことが無いのに何でこんなにプライドが高いのかと思いました。 今考えるに50年以上前は歯科医師がとても少なく、同級生の親に歯科医師が多いのがその一因だったと理解しています。

 卒後の身の振り方を模索して歩いた大学の医局員時代(以前にも書きましたので参考にしてください)は厳しい師匠から色々なことを教わりました。その中である後輩が、先生がこの様に治療しろといったので私はしました。少しでも結果が思わしくないと指示した先生のせいにする。そして自分の責任とは全く思わない。これは、その指示した人の責任ではなく指示を受けて自らも納得してやったので、それは指示した先生の責任だけではない。何故なら口の中は刻一刻変化するし、指示を受けたことを治療する一部の情報として、後は自分の頭で考え自分の責任の上で治療する。みな同じ資格を有するからと厳しく指導されました。医局検討会の報告でも、「私は言いました」とか、「精一杯やりました」で済ませるスタッフ。その一方では、自分の失敗は一切報告しないが小さな人のミスをネチネチ追及。大事なのは結果がどのようになったかであり、結果が悪ければ意味が無い。そしてなぜ旨く行かないのかという途中のプロセスが一番重要です。飛行機が落ちたときに、一番大事なのはその原因を追究すること。人間誰でも神様ではないから、失敗はあるわけです。何回も医局員全員が注意を受け、色々教育を受けました。多数のスタッフを指導した経験から、これらの情報のやり取りを阻害する因子として最初は無かったプライドが素直に口腔内で一番大事な診断を妨げる。やがて、明らかに誤診に近い状態を患者さんの前で注意をすると、自分は患者の前で恥をかいた。その行為が良いか悪いかは、患者さんが判断するわけです。それらを承知の上で医局員教育をするのは、車の修理をするのと異なり、感情のある人を扱うので一番気を遣うところでした。両刃の剣になるわけです。もちろんそれが、患者さんの不安を煽ることもあることを十分承知の上です。この部分が医学教育の難しさ。裏で言えばよい? しかし、その場で言わないと理解しづらいことが殆どです。これらの問題について多くの医局員の間でのディベートが出来なかった。理論的に追い詰められると、自分の人間性を否定されたとか、人格に傷がついたなど時には理論的に追い詰められて反論できなくて泣き出したりする医局員。(ディベートとはそのようなことを考えないで、自分なりの反論する理論を構成して言いなさいときつく指導されました。)反論できないと、それらは全て否定されたと勘違いするようです。人間の口の病気を究明するのに、変なプライドは全く必要ない。でもみな平等の農耕民族のDNAは変えられないのかもしれません。(開業後海外では自分の考えをハッキリ言うと、とても興味を持って色々な情報を逆に頂ける経験を多数しています。それが今の後藤歯科のPCのシステム構築に役だっています。)

 多くの医局員と切磋琢磨、たくさん討論して経験を積んでくると若い医局員に変なプライドが出現して、私は患者の前で罵倒された、に発展するピント外れな人材も経験しました。
 長期にわたり以上のような多数の経験をした後に開業しました。開業後、子供の口腔検診で若い歯科医師と組んで検診をしているときに、隣でこれは虫歯になりかけ・・・という話を聞いたので、「先生、虫歯のなりかけとはどの様な状態ですか? 」と失礼のないように質問したら、大変不機嫌になりあからさまに俺のプライドを傷つけたな、というような態度をとられました。相当プライドが高いようでした。(あまりディベートをしたことが無い様に感じました)友人が主催するジャズの会場で私が歯科医師と分かると、突然大きな声で歯医者はプライドが高いね!!と言われました。真意を確かめるべく聞いてみると、多数の医院の機器を取りつけ、その結果から話していることが理解できました。
 そのほか色々な場所で同じような話を聞きます。
そのプライドとは?私流にそのプライドを分析すると、昔は政治家も色々な専門職も情報を独占できました。しかし、今は殆どの情報はスマホ・PCで手に入るので変なプライドはネット社会では通用しない。ですから変なプライドは現在のスピートの早くなった社会からの大事な情報を、鎧を着てブロックする様に映ります。水と同じく情報は多いところから少ないところに流れるからです。

 もちろん誰にでも、自分にもプライドかあります。しかし、仕事をしているときは変なプライドは必要無い。後藤歯科でも技工士・衛生士・受付とチームを組んで歯科医療をしています。かみ合わせもヒエラルキーの組織からは、治療法の構築は不可能だったと思います。院内の仕事は全ての職種が水平に情報を流す必要性があるからです。一般的に歯科医師はパラデンタルスタッフに対し、わけの分からない優越感を持っているようです。
以前に歯科助手を経験していたという患者さんが来院。診療が始まるや否や全て相手が診断を下し、(それもピント外れもはなはだしい)さらに一番の驚きは歯科の素人なのにそのプライドの高さに驚きました。これは歯科医師のプライドが高い裏返しかもしれません?

 今の政治問題も、もしかしたら時代遅れのプライドが原因かもしれません?
AIを筆頭にすごいスピードで科学が進歩している。一生かかって覚えたことは秋葉原で売っている100円のチップに入る時代。たかだか28本の歯を残せない職業に変なプライドは必要ないと思いませんか!!さらに失敗を隠さずオープンにして、世界的に有名になった会社、それはホンダです。仕事上で変にデータを改ざんしたりすると後が大変です。週刊誌の販売促進のお手伝いにならないようにしたいものです。



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Vol 49 《太陽発電とガス発電》


 以前に書きましたが、太陽電池の実験を中古で買った家にて長年行った結果、突然雨漏りがひどくなり、住んでいられず、また修理にお金がかかるため建て替えました。
 設計の基本は、先ず太陽電池が最大限に乗る屋根から設計しました。したがって出来上がった家は、倉庫のようなものになりました(デザインは車も家も、中に居る人には関係なく、居住性重視ですが家内は不満)。次に太陽電池のエネルギーは、実はあまり電気を起こすと電圧を下げることが判明。それはモッタイナイので、その分は大型の蓄電池に貯めたいと考えました。
 また、エネルギーは家のどの部分から逃げるのかを古い家でレーザーのガンタイプの測定器でくまなく計測しました。その結果、以前から思っていた窓からかなり逃げることが解り、北海道で使用する3重窓にしました。また、壁も4インチではなく6インチにして保温性を良くしました。
 毎日仕事でタービンの音を聞きながら生活していたので音には敏感です。静寂がほしい要望を満たすためにすべて3重窓にしました。
さらに古い家で少しデータを取っていたガス発電(電気を起こすために出る熱を、風呂に流用)を利用、エネルギーは太陽とガスの二種類で発電にし、家が道路から2メートル近く基礎の部分より高いのでエレベータを設置し、足が不自由になっても1-3階にいけるよう準備万端にしました。ちなみに、ある営業マンからオーバースペックだと笑われました。
「自分が作るので何悪かろう、大きなお世話だ!!」
 保温が良いということは当然、空気の流通に問題が出てくるので一番小型のセントラル冷暖房システムを導入、電源は3相(少し専門的になりますが)ではなく単相の200ボルトで駆動させました。
 設計については、今までに診療所において増築、研究棟を含めた設計もした経験があり、長い間診療所の建築でお世話になった、故本杉次郎先生から建築のレクチャーを受けていたので、中古の家で色々リノベーションを繰り返し実験していたので無理言ってこちらの要求を受け入れてもらいました。エネルギーをコンピュータで見えるようにするため(これはメーカーでも数少ない試み)普通の家の工事より複雑なので工期はかかりました。その間、仮住まいのため、歳を取るとそのストレスは大変なもので荷物の中に10か月ほど住んでいました。
 建築をするとは思わず、引っ越しの前に買った大型の冷蔵庫はクレーンを使い購入を含めて3回移動、家の設計に6か月ほど費やしました。
 完成してから荷物の運び直しや、家の情報がいつでも取り出すことが出来るよう今度は家の荷物の置き場の設計をしました。ダンボールが全て無くなるのに1年以上が経過しました。そのため家内が半年くらいでギックリ腰になり、3か月間ほどダウンしました。
 エネルギーの使用量、家での発電量、ガスも含めた毎日・毎月・年間のデータがパネルに出るので確認、何か守銭奴ならぬ守電奴になった感じでした。

 結論から言いますと、年間80パーセント以上のエネルギーを自宅の発電で賄うことが出来ました。これは想像をしていた以上の成果でした。以前メーカーの主催する講演では3相と一般の電灯線の2系統でドライブしていましたが、我が家は200ボルト単相で、一番小さなセントラルマシンの機器でドライブすることに成功しました。最初は容量不足を心配していましたが、太陽発電・ガス発電・大容量の電池で駆動することが出来たのはうれしい誤算でした。電気は庭の下にある地下室にも供給しているし、常時色々な器具が働いているのであまり省エネしていませんが、まずまずの結果と思います。
 年間を通じで家の温度はほぼ一定なのは、年寄りにはとても住みやすいです。外部からの音も静かなので音が漏れず、夜中に居間でジャズを楽しむことが可能になりました。
 しかし、今回建築をしてみて前例が無い工事は、メーカーにはあまり歓迎されないことに気付きました。これは、ある程度面白い実験なので建築雑誌に発表しても良いかと思いますが、デザインが良くないのでダメな感じを受けました。自分の仕事のシステムも、家作りも含めて前例のないことをするのは、あまり歓迎されないようなことを再確認しました。
 しかし、今後のエネルギー政策を考えると、かなりな価値があるものと自分一人で満足しています。原子力発電を含めて、電気自動車の増加でエネルギーの消費拡大は深刻さを増すものと思われます。太陽発電の試験をパネルが世の中に出始めた時から、秋葉原で買った太陽電池で長い間実験をした成果をもとに今回の家づくりには満足しています。少し省エネしたら、全てのエネルギーを自宅で賄えそうですが、そこまで節電するのは老人の体に良くないのでやめます。
 以前に家のことを少し書きましたので、その結論としての記事を書きました。
私は、メーカーの回し者ではないので、もしみなさんの参考になれば幸いです。



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Vol 48 《規則と歯科医療》


 毎朝、職場まで自宅から10分程度車に乗ります。家を一歩出ると車は左側通行、信号は止まれ、追い越し禁止。またある日突然職場までの細い道が一方通行になっていました。
 毎日考えないで行動しているが、実は良く考えると規則だらけの中で生活をしていることに気づかされます。
 歯科医師も学校を卒業してどこで研修を受けるにしろ、治療を行う上で健康保険の規則に縛られることは間違いありません。この治療は何回で、この治療にはこの薬を使う、等など。すると、頭がいつの間にか健康保険の制度で、人生までもがワンパターンになる様な気がします。卒業以来多くの先輩に色々なことを教わり、多数の後輩に教えると歯科医師のメンタリティーを垣間見ることが出来ます。私のように転職して歯科医師になると、この価値観の固定化がとても気になります。歯科医師は本来自由業であり、基本は全て自己責任の上、自分の裁量権を駆使して医療を行うことが出来るわけです。しかし、あまり保険の規則に毎日触れると、健康保険の規則イコール歯科医療であるとの錯覚が若い歯科医師の中に芽生えるようです。(最初に歯科医療が有り、それは毎年歯科医療の高度化で内容の幅が広がる、保険はその一部分をカバーしている)中には、歯科医療は保険で行う歯科医療と、保険外の歯科医療が存在するようです。
 これは医科での話に転換すると、盲腸の手術に保険の仕方と、保険外の手術の仕方が有る様にとられます。基本的にベストなものは一つと思いますが?しかし、健康保険の規則は国の医療に充てる財源が基本で作られているので、少し真剣に歯を保存しようとすると、この規則が大きな邪魔をするわけです。残念ですが、歯科医療は抜いた後どうするかという学問からスタートしています。ですから本気で歯を保存すると矛盾するのは当たり前で一度できた法律(考え方)は殆ど変えることは不可能です。その規則を優先する態度は歯科医師のみならず、人間生活の中でも問題が起こるようです。

 以前役人の同僚が倒れた時に、周囲の人は救命救急の講習会を受けていないという理由で規則に触れるといけないので、全く手を出すこと無く同僚は亡くなったという信じがたい話を聞いたことが有ります。最近では、土俵の上で倒れた人を看護師の資格のあるような女性が駆け上がったら、土俵は女人禁制なので土俵から降りるよう、行事から何回となくアナウンスが有りました。あれを見ていると、規則が大事なのか、人命が大事なのが大いに参考になりました。 
 若い歯科医師を教えていると、この事実を笑うことが出来ないと自分の職業に照らし合わせると思いました。

 昔、学生時代に医科大学の学園祭で保険の規則通りに治療して手術は成功した、しかし患者は死んだというブラックジョークを思い出しました。歯科の場合は、歯の10-20年先がどの様になるかという推測が大事になります。

 以前に書いた様に、ドイツの州の会長を取材した時に、話している途中で突然通訳なしで英語にスイッチし相手が話しだしました。こちらが直ちにレスポンスしたら日本では聞くことが出来ない色々な面白い話を聞くことが出来ました。こちらのつたない英語にも関わらず、次から次へと話が続きました。その中で記憶に残る話の中に、ドイツでは当時医療にまわせる財源が少ないので政府からの医療費は一定限度で、それ以外は患者さんと話し合いの上、自由に決定しているという事でした。又、政府との交渉では、その保険の割合のパーセンテージの摺合せをしているという事でした。日本はなんでも保険に取り込み、政府は国民に何でも保険で出来ますと言う。しかし、その裏をかいて処置をして、その結果不具合が生じた口腔内の難症例をテレビ出演後に多数処置しました。多くの問題症例を見るにつけ建前だけの規則は結局医療費がかさみ、患者さんが不幸になるという事をテレビの出演から感じ取りました。
 このような話をすると、人権団体から受けられない人が出てくると言われそうですが、今の日本では、歯科医師が少ない昔ならともかく、現在のように歯科医師過(私はそう思いませんが)時代が変わると、ドイツのようなハッキリ財源を決めて、そこからは差額は自由裁量権でしたら無駄な医療費がかからないように思いました。やはりドイツ人は合理的な考え方をするようです。ドイツ車に長く乗っていると同じようなコンセプトで作られていることも実感します。日本は農耕社会が長かったので、結果の平等が美徳とされるようですが、そろそろチャンスの平等にメンタリティーを切り替える必要があると思います。

 今後の日本は高齢化、世界の中で通用しない経営?中国の凄まじい追い上げ、人口減で医療の効率を考えないとこれからの10年は今までの10年とは全く異なるようになるものと想像できます。転職して長年歯科界に身を置き、医療システムにコンピュータを使い効率を上げ技工士を雇い、トヨタのカンバン方式のように時間と材料の無駄を省き、チームで歯科医療への取り組みをすることがさらに必要なことを実感します。

 最近、院内のネットをさらに進化させ、会議も時間をシフトして出来るようにスタッフ全員で訓練をしています。幸い、殆どの人がキーボードにアレルギーが無いので、歯科医院の新しい働き方改革にチヤレンジして全員の労働時間短縮に努めています。それにより健康寿命に大いに関係する噛みあわせの治療精度向上にも力を入れることが出来ます。



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Vol 47 《ムシバ予防とは》


 一言で言うなら歯を抜かない事。総入れ歯の人にムシバ予防の話をしても、その患者さんのお孫さんには役に立つが、本人には何の役にも立たない。歯並びの治療も歯が有るからの問題で、歯が無くなったら何の意味も無い。落語に出てくるような笑えない話を時々耳にします。
 歯並びは治ったがムシバ・歯周病で歯が無くなった。歯並びの治療は薬と同様良いことばかりではないデメリットもあり、現在アメリカで見直されているようです。私もテレビ出演後に何例も難症例の後始末に悪戦苦闘した経験から同じようなことを考えています。(歯並びとかみ合わせは全く別物です)
 歯を抜かないという事は、逆に考えると、歯を抜かれるファクターを取り除けばこれで終わり、「甘いもの食うな」「歯を磨け」、何か政治家の標語みたいですね。
実は、私個人の感想では世の中で標語と言われるものをいくつか挙げてみると、予防の理解が深まると思います。ムシバ予防を筆頭に、教育改革・働き方改革・政治改革・行政改革、これらは皆共通点が有る様です。どちらかと言うと、あまり真剣に取り組んでいないケースが多いような感じを受けます。筆者が少しひねくれているのですかね?
 一例をあげると、政治家が皆様の暮らしやすい生活をナントカ?等の標語は実に心地よい。しかし、それをどの様に実現するのか?どうやら実現できそうもない部分に甘いキャッチフレーズが存在するようです。ムシバ予防の話も全く同様です。この抜かれるファクターを取り除く、ブロックすると言っても良いと思います。

 では、この歯をダメにするファクターを2~3例を挙げてみましょう。実は、歯と歯の間のムシバを見つけるのはガンの極早期発見が難しい様に、相当ベテランでもムシバを見つけることはとても難しいです。次に、詰めてある横からのムシバもとても難しい。又、下請けに出した技工物は装着するときに製作者が立ち会わないので、どちらか言うと精度が甘く、何年か経つとビッタリ合っていないので横からいつのまにか骨折ならぬ、いつのまにかムシバになるわけです。これらをブロックするには院内に技工室を作り、技工士をかなり教育しなければ成立しません。衛生士の為には予防歯科室を作り、それを実行すると赤字部門になるわけです。なぜなら、歯は痛くなってから治療するものと言う方程式が邪魔をして痛くもないのに、なんでそんなことをするのかと逆に文句が出るからです。又、衛生士の教育も簡単ではありません。現在歯科界は、一般事務職の歯科助手と言われる人が多く働いています。その人達とは資格の問題で、一線を隔す必要がある。歯科衛生士(国家資格+歯科衛生士法で医療業務従事者)の教育がとても難しい。あまり熱心に教えると、私達は歯科助手と同じ簡単な仕事がしたい、と一度に退職することを何度も経験しました。衛生士は技工士と同様に、ユートピアの職場を夢見て職場を変え失望して歯科界から退席するようで、離職率も高い職業の様です。50~60年前からあまり変化が無いようです。しかし、後藤歯科が目指す衛生士の仕事は、大変にやりがいがあり奥が深いです。

 先日も、開業以来通院し一本の歯も無くすことなく40年近く経過した患者さんから「定期検診をして予防をしたので、とても良かった。体がとても元気で快適です。」という感想を突然言われました。時を同じくして「20歳代から40歳代まで噛みあわせが何時も頭に有り体調不調でしたが、40歳の半ばに当医院で全部治してから体の調子が良くなり、本当に助かりました。」という70歳近い患者さんの話を立て続けに聞くことが出来ました。これらの話を聞くにつけ、衛生士の仕事の重要さを40年近くたって、再認識しました。衛生士の教育を投げ出さなくて良かったと思う瞬間です。衛生士の仕事は、とても大事だと確信しています。その仕事のおもしろさ、世の中の役に立つという実感を掴んだ衛生士は、子育てを終えてもカムバックする人が多いです。日本中に衛生士の資格を持つ人は多くいるが、卒後10年で何パーセントが仕事をしているのか国の政策に疑問を持ちます。
 ドイツにベンツの本社のあるシュツットガルトを取材した時に、ドイツでは州によって多少異なりますが、会長が各個人の医院で歯科衛生士になりたい人を募集して、歯科医師会が診査して資格を与えるような話をしていました。さすがドイツ人は合理的な考えをするものだと思うと同時に、日本でもそのような方法を取ったら衛生士不足は解決するかもしれません。しかし一度できた法律を変えるのは殆ど不可能と思いますが?

 歯の形態も、噛みあわせも、歯の寿命に大いに関係が有ります。歯がダメにならない形態は技工士・衛生士とタッグを組まないと歯を失う原因のブロックはとても難しい。後藤歯科医院での長期のコンピュータのデータベースから推察できます。ことほど左様に、ムシバ予防はマスコミが言うような簡単なものではありません。予防は、言い換えるとその医院の総力戦で、システムをいかに構築するかが大事ですが、歯科医師の教育がさらに一番難しい部分です。

 パソコンが出始めの頃、趣味の無線を通じでパソコン通信をしていました。たまたま、私が歯科医師なのでハムの仲間から色々な質問を受けました。その中で面白いのが、「歯科医師はムシバ予防に力を入れたら失業するのでは?」ととても心配をしていただきました。当然当方の答えは、「政治改革と同じように簡単に行かないので心配ない。」と言うような答えをしたことを思い出しました。色々なキャッチフレーズのように、殆どだれも真剣に取り組まないものが多い様に思います。全部がそうとは思いませんが如何なものか?



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Vol 46 《検診は何でするの?》


 体の検診は何で必要なのだろうか?インフルエンザの検診は聞いたことが無いし、おたふくかぜの検診も聞いたことが無い。又、一部は国民の税金まで使い実施しています。
 では、検診と言ってすぐに頭に浮かぶのは、ガン検診ではないかと思います。
 では、ガン、良く知られる今でも猛威を振るう結核、歯の検診などには共通した特徴があります。病気の症状を、水面で考えると理解しやすいと思います。水面から出たものは痛みなどの異変を感ずる(自覚症状)、しかし感じないが水面下で着実に人間の体を蝕む病気が多数存在します。私は歯が専門なので、すぐに頭に浮かぶのは当然ムシバ、歯周病などです。しかし患者さんに説明をすると、病気と言う概念が無い不思議な病気です。50年以上歯医者をしていますが、今でも不思議です。鼻の頭が少し溶けると大騒ぎをするのに、そこからわずかな距離の歯が溶けても誰もおかしいとは思わない。病気という概念が無い。これは何故?

 前にも何回となく書きましたが、今まで発展途上国(いくつかの国を取材した経験から)のように歯科医師が少なく、患者さんが多い地域では治療は抜歯しかできませんでした。ですから抜くのが治療、日本も戦後その状態が続きました。
 その結果、今でも歯の治療で抜歯は歯科医師も患者さんも疑問を持たないのは仕方がないものと思います。明治時代の憲法を今でも変えられないのと同じ現象が起こるのは当然のことと思います。時代が変わっても人間の考えはものすごく保守的です。     
 少し前の歯科医師会の雑誌に、歯科医療はついこの前まで歯を抜いた後の学問として発展してきた、と言う記事を目にしました。最近はようやく歯を残す治療が浸透しつつありますというエライ学者様の先生の文章を目にしても、やはり基本は今でも保険制度の考え方は変わらない様です。
 しかし、国の方針で昭和40年代から急に歯科大学が増加して、現在は歯科医師過剰と言われるようになりました。ですが、私の感覚では歯を本当に残そうとする歯科医師は、非常に少ないと思います。それは、歯を残す評価が保険ではとても低く、それより歯を抜いた後の処置にはとても高い評価が有るからです。これらは、明治憲法が今でも生きているのと同様です。ですから、抜いた後の対費用の効果の高いインプラントは歯科界でブームになりチャンピオンになるのは当然、仕方がないと思います。

 以前当医院は他と変わった歯科医院という事でテレビ番組にて一時間、再放送を含めて4回放映されました。放映後、受付にある4本の電話が2週間ほど鳴りっぱなし。インプラント・義歯・矯正関係・その他のトラブルを抱えた多くの患者さんが全国から来院しました。
 それらのトラブルを抱えた患者さんによく説明して治療しようとすると、最初は「すべて任せます。」と言われ、治療を開始すると途端に手の平を返したように豹変する患者さんを多数経験しました。その原因の一つが長い間脳みそに噛みあわせの悪い情報が届き、それを一気に除去すると、リバウンドとして不快な症状を出すからです。(症状は一定の期間で収まりますが)
 これは、麻薬中毒の治療している数少ない海外の医師が書いた記事から推論するに、薬の禁断症状ならぬ、噛みあわせの禁断症状だと現在個人的には推論しています。
 他院で散々治療を受け、その後始末を何とかしてあげたいという気持ちで取り組むと、とんでもないしっぺ返しを食らうことを何回も経験しました。最近は患者様(後藤歯科医院では口が曲がってもこのような言い方はしません、医療は相手の弱点に付け込んで金儲けの手段としてはいけないという、医師としての高い倫理観を求められるわけです。ですから領収書には謝礼という事で印紙が必要ない。医療を商売として認めるなら、面倒な急患や、前述したような人は儲けがマイナスになるので最初から断ればよいわけです)として世間では医療は商売として認めさせよう風潮が有り患者様は神様の様です。特に他院でトラブッた患者様は、「あれダメ」、「これをやれ」など殆ど患者様が診断を下すわけです。そしてドクターショッピングを楽しむようです。

 しかし、そこから見えてくる姿は氷山の一角で、今後ますます増加して本来は歯を残す医療行為としての歯科医療を複雑にしているものと考えざるを得ません。短期間に多くの同様な患者さんを治療すると、当然こちらもそれに対する対策をコンピュータに使い、出来るようになりました。これには、歯科医療の本質をよく理解した歯科技工士・歯科衛生士の存在は欠かせません。システム工学に理論づけられたチーム医療でチャレンジ出来るものと考えています。

 話がもとに戻りますが、歯科の病気は症状が水面上に顔を出してから対処するとサシ歯・入れ歯が増えて、人生の後半で噛めない事が原因で色々な病気の引き金を引き、膨大な医療費が発生します。これは40年間の患者さんのデータベースから感じます。しかし、会社と歯医者は全く収入体系が逆です。会社は不良品を作ると倒産、歯医者は口の中を不良品だらけにすると世間では成功した歯医者と言われるようです。
何処からとなく石が飛んできそうなので止めておきます。
 皆さん、やはり歯の検診は必要です。前の原稿を参考にされてください。人生の後半で楽しい食生活と未来を託す孫たちの為にも当然避けることが出来る無駄な医療費を使わないようにしましょう。



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Vol 45 《業界用語と歯科医療》


 歯科大学に入学する前の社会人になって間もないころ、友人がある有名なデパートに勤務をはじめました。社会人になりたてでお互いに職場の情報を交換していました。そんな時に彼が店内のアナウスで、あるワードが流れるとその対策に全員が対処するという話を聞き、これが一種の業界用語かと感心しました。 
 ある事がキッカケで夢にも思わなかった歯科界に入り、同じような業界用語を知るようになりました。
 その中で今でも不思議に思っている「歯の神経を抜く」と言う言葉をよく患者さんからも聞きます。解剖学を勉強した学生の時代から、この複雑な歯牙の中に存在する組織から(医学用語は歯髄)神経だけをどの様に抜くのか、見てみたいものだと思っていました。
 電気には何事にも理論が有り、何故このような用語「歯の神経を抜く」を使うようになったのか?語源の調査をしたことが無いのでわかりません。しかし、毎回書いているように、昔は歯科医師不足でいちいち説明をしている時間が無かったので、歯の痛みをつかさどる神経が歯髄に有るから痛いので、苦し紛れにこの部分を取れば痛みが取れるので神経を抜くという言葉が一般的になったものと自分では解釈しています。興味がある方は語源を調べてください。これは、治療を間違った方向に誘導する可能性があるような気がします。ちなみに、当医院では歯の臓物と表現しています。

 以前、脳外科の友人と話をしている時に、頭の痛みを完璧に取る方法があると言われ方法を教わりました。それは頭の痛みを完璧に100パーセント取るというのです。いつものように彼の話を真剣に聞いていると、それは脳みそを全部取ってしまえば完璧であると。一杯食わされました。
 患者さんが自分で診断をして「先生神経を抜いてください」と言う話をよく聞きます。言い換えると、「自分の生きている歯を殺してください」という事です。
 その話をそっくり当てはめると、歯の痛みを取るときは、歯の臓物である世間で言う神経をすべて取れば歯自身の痛みは無くなるわけです。なぜなら、脳みそ同様に人間の死骸ならぬ歯の死骸が出来上がるからです。これが世間で言う「神経をとる」です。脳みそを取ると人間の死骸が出来上がるように、歯も死骸になり臓物が入っていた部分は空洞になり血液が流れないのです。

 バイ菌は、歯髄の先端から血液の流れていた血管の代わりにバイ菌の栄養の補給路に変化します。バイ菌に必要なエサが豊富にあり、体温はバイ菌が繁殖するのに最適なのです。歯はバイ菌の温蔵庫に変化します。歯の痛みが一時は消えますが今度は中に繁殖したバイ菌が歯の尖端の骨を破壊し、そこから全身にバイ菌が駆け廻ります。(最近は他の臓器、心臓その他の臓器に悪さをすることが言われています)
 ですから、世間で言う神経を抜いた歯が半年、長い場合は2-5年後に痛くなります。タイムラグで臓物を取ったこととの関連性が分かりづらくなります。
 よく患者さんが神経を抜いたのに痛くなるのはおかしいとマジメな顔をして訴えます。それは歯が痛いのではなく、根の先端からバイ菌によって化膿した歯の尖端の骨が痛いからです。しかし、人間には抵抗力が有るのですぐには痛みが出ず、その間白血球が24時間バイ菌と戦い白血球がそのバイ菌を食べるのですぐには痛みが起こりせん。バイ菌との戦争の犠牲者(膿)として、体内に吸収、大量の犠牲者が出るとほっぺが腫れます。バイ菌の力が強くなる、又は体の抵抗力が落ちると(体が疲れた時)なんとなく痛くなり、そのうちに腫れてくるわけです。
 一度中に入ったバイ菌を取るのはとても難しい治療で、多くの問題点を含んでいます。
以前に書きましたので参考にしてください。

 この死んだ歯はやがて体に対してトゲとなり、色々な悪さをした後に抜かれます。そうすると、40歳代から抜かれる人が統計的に増えます。そして治療難度が急に増します。ですから40歳を超えると歯のトラブルを抱える人が増えるわけです。
 しかし、世間では歯の質が悪い、子供を産んだから、年だからと言うと、患者さんの思考回路は停止するようです。質が悪いなら上がさし歯で下の前歯が問題ないのは理解できません。子供を産んだから?男女の抜歯曲線には差が有りません。年だから?40歳代で抜かれたらこれも年ですか?歯の老衰も聞かないし、なんですかね?
 実は、個人的な意見では使っている言葉の意味を、ムシ歯だけでなく、噛みあわせもキチンと理論的に考えることが、今後益々高まるであろう患者さんからの歯科医療水準の要求に対処するには必要なことと思います。

 若い歯科医師が、講習を受けると出来るようになると思っているようですが、その歯科医師が20-30年、臨床経験を積むと歯科の色々な分野で患者さんからのトラブルに遭遇すると良く分かり、その結果また講習会が流行る様です。
 結論から言いますと、昔講習会にたくさん参加した歯科医師が、その時は出来るようなムードになったが実際の診療室では殆ど役に立たなかったと証言しています。
 これらの事実は50-60年前から変わっていないようです。なぜなら勤務した歯科専門病院が主催する研究会で、毎月全国から140人近くの歯科医師が集まり、2日間にわたり研究会で色々な臨床上の問題点を討論し、それらの問題点について何回も司会をしこの事実を40年以上前に知りました。
 若いときは出来るだけ多くの歯科医院を見学して、そして何をしたいのか、歯科医師としての目標を立てないとあっという間に人生が終わりになります。転職して歯科医師になった少し古くなった歯科医師からの提言その2でした。


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Vol 44 《診療圏と歯科医療》


 転職して歯科大学に入学して、大学の教授のイメージは自分の中でこのような人物だろうと勝手に思い込んでいました。大方自分のイメージは合っていました。
 しかしある医療管理学の先生のイメージは全く異なりました。服装もダンディーで話もうまく、今でも記憶に残る先生の一人です。
彼の授業でとても興味を持った話の中に、診療圏と言う概念があります。これは、平たく言えば患者さんがどの地域から来院するかということです。
 たとえば、海に面した地域に診療所があるとしましょう。そこはとても景色も良いし、また働く人の健康にも良いかも知れません。しかし診療圏という概念に当てはめると、とても条件が悪いことになります。何故なら、来院する患者さんは180度圏内しかありません。海から鯨が治療に来るなら話は別ですが?

 昔、歯医者が成功する条件は1場所(駅に近い)、2奥さん(受付で愛嬌を振りまく) などという話をよく聞きました。転職して歯科界に入りこれらの話は、何だか分からないが何となく違和感を覚えました。(医療行為にそのようなファクターが多いのは?飲み屋なら理解できますが?)長い医局生活、師匠から色々なことを教わり、また全国から研究会においでになったたくさんの先生方から色々な話を伺い、家が歯科では無いので歯科界の内情が少し自分なりに見えるようになりました。

 それは、歯科界にはとても大きなパラダイムシフトが起こったことです。丁度その時代に、アメリカのアルビントフラーが書いた(コンピュータの普及により大きな時代のパラダイムシフトが起こっている)本がベストセラーになりその本を熟読しました。今考えると歯科界もその時期と重なり、同じ様なことが起こったということが今になると良く理解できます。それは、毎回書きますが歯科医師が少なく患者さんが多い時代。ある意味で殆どが応急処置の時代。そこから、歯科大学が雨後の筍のようにでき、あっという間に歯科医師が急増しました。しかし、基本的な考え方は歯科医師が少なく患者さんが多い状態のメンタリティーは殆ど変化していません。何故なら、人間の思考を変えるのはとても難しいことを、長年多くの新人歯科医師、又大学の臨床実習施設の説明で多くの学生に会うと、彼らの価値観も全く昔のままのようだからです。また、教育しても家が歯科医院だとまた簡単に元の思考に戻るようです。  
 転職して歯科界に入った人間からすると殆どが判で押したように思考回路が同じように感じてしまいます。

 そこで、何処に診療所を作るかというときに、これは以前にも書いたように、両親が関東大震災に会い、その体験談をいつも聞いて育ったおかげで、地域で一番安全な場所(今は危険な場所を知る老人が殆どいなくなりました、また、土地はお化粧するとわからなくなります)を選びました。また、駅から遠いし当時の一般的な常識からは完全に外れていました。
診療圏の概念をよく理解し結果的に自分の中に有る歯科界のパラダイムシフトを理解していたと、今になって自分の今の診療所の場所の選択は間違いないと改めて思います。また、海外で多くの大学、個人の診療所を見学して、自分の考え方が確かであることを確認しました。それは本当の意味でのシステム工学に基づくチーム医療の実践で初めて可能になるわけです。

 ちなみに、先日も海外の科学番組で今後起こる可能性の高い巨大地震についての放送を見ましたが、自分の想定したことが段々現実のものになりつつ有る様です。
以前に当医院は少し変わった歯科医院の様なのでテレビで紹介されたこともあり、診療圏は北は北海道から南は九州と広範囲となっています。
テレビ出演によって咬合関係でトラブルを起こした患者さん、義歯、クラウンブリッジ、矯正治療後のトラブル等、いわゆる咬合に関連したトラブルが多いです。
それらトラブルをきちんと治療すると、最終的に定期検診で来院する人が多いです。もし義歯などで、理論的に技工士と一緒に製作をしなかったら、いつもあちこち痛いという患者さんであふれるか、簡単に他院に転医して、遠方からの患者さんのプールはありえません。しかし、技工士とタッグを組んで咬合学の理論に基づいて作られたホテツ物は簡単に痛くならず、殆ど6ヶ月に一度か一年に一度の来院で済みます。つまり、場所はあまり関係なくなります。定期健診で来院する患者さんから、遠くでも結局きちんと治療が終わることで来院回数が少なく、結果的に時間が短いので人生の中で無駄な時間とお金を使わなくて済むという話を最近聞くことが出来るようになりました。これも、予後を長期にわたり、理論的に検証した結果と思っています。

 これらの現実を今後さらに対処する為に、最近裏の第2駐車所の拡張整備をしました。コンセプトは高齢化社会に適応するパーキングです。車の間隔を広く、真ん中に緑を配置して、何処からでも入りやすく出やすいことし都会の駐車場とは一線を隔し、さらに道から1.5メートル、セットバックして緑を多くしました。道路からの圧迫感をなくしたことで、近所からも好評です。
また50メートルの井戸をパーキングの隅に作り災害時の水を確保しています。いくら汲み上げても枯れることはなく、現在は花に水をあげています。
学生時代に講義を受けたダンディーな教授の教えの中に有った、遊び心を少し実践しました。



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Vol 43 《電波新聞と歯科医療》


 私の趣味は、アマチュア無線です。中学・高校と壊れたラジオの部品を集め無線機を作りました。時にはクズ屋さんに行き、壊れたラジオの部品から、さらに小遣いをためて秋葉原(当時は今の秋葉原とは全く雰囲気が異なる)に行き部品を買うのが楽しみの一つでした。
その趣味は、今でも続いていますが、忙しさであまり電波を出していません。

10代は一晩中、電鍵をたたいて海外と交信をしていました。
開業後も機器をそろえないと気が済まず、それはある意味では精神安定剤の役割をしました。さすがに開業後は機器の製作を昔ほどしませんでしたが、時にはアマチュア無線の雑誌から小さな機器を購入していました。
そんな時に、製品を包んでいたのが実は電波新聞でした。とても興味が有り、それ以来購読するようになりました。ちなみに私が住んでいる地域では購読者は私一人だそうです。又、記事の中で新製品情報を目にするのが楽しみの一つになりました。新しい技術を掲載するハイテクニュースの欄では、今後自分が想像した製品が出るだろうと予測をするのはとてもオモシロイです。

これらの目的は、歯科医療に何か役に立つものはないか、流用できる物はないかと心ワクワクしながら考えることです。30年以上が経過しました。
 そこから得た製品情報の一つがプロ用のワープロ・一般のワープロ・新型のコンピュータです。現物も見ずに何台も購入しました。以前に書きましたように税務調査があった時に、自分の趣味だろうという事でクレームが付きました。それは、前例が無いからと言う理由でした。当然猛反発。
 以来、新製品をたくさん買い、テストの結果あまり歯科にはそぐわない製品もあり、多くの失敗をしました。しかし大企業が使う高額の画像ファイリングシステムを10年ほど使い、そこから多くのヒントを得ました。もし、それらを使わなかったら現在の後藤歯科のコンピュータシステムは稼働しなかったものと確信しています。

 その間、コンピュータに全く素人の技工士に教え、又、プロに付いて勉強させました。その結果生まれたのが、現在の後藤歯科医院のコンピュータシステムです。
もちろん、仲間のハムからの情報はシステム構築に大いに役立ちました。
 又、院内のセキュリティーシステムもそこから得た情報で構築。専門家に頼むと高額になるので、自分で部品を集め、どうしてもできない部分をプロにお願いしました。システムの設計は、当然自分でするわけです。
 
以前、非常用発電機を導入した時に朝の打ち合わせが有り集まった業者と話をしていた時、彼らは発電機を注文したオーナーとは知らず、どこかの営業所から来た人間と間違えられたことがあり、後で大笑いをしました。

 最近は、歯の咬合治療で、それを可視化することです。秋葉で色々な部品を買い、それらを組み合わせで自作の測定器を完成。私が希望する製品が世界中にどこにもないので、とても役に立ち、今後データの蓄積が楽しみです。製品を作るのに半田ごてを握り、童心に帰って制作しましたが最近は目が悪くなったり、少し手が震えたり、さらに最近の部品は非常に小さいので制作に時間がかかりました。しかし、完成した試作機は、あまり形が良くないがとても満足です。
 天下のソニーも最初は試行錯誤で試作品を繰り返し、そしてお化粧をして価値ある製品に生まれ変わるわけです。
何歳になっても、電気の技術者の夢を捨てきれず今でも夢に出てくるし、その夢の一端を、ささやかな試作品を作ることで満足しています。

私の考える製品は、咬合の臨床に生かす役立つ製品と理解していますが、作っても理論を十分熟知しないと使えないし、それらはマンツーマンで教えないと出来ないし、刀鍛冶のように技術の習得には職人技的な要素がいるからです。脳外科の手術も同様です。
 売れないので製品として世に出ることは自分が生きている間は無いものと院内だけでさらなるエビデンスの蓄積をしたいと考えています。
 以前にもあるメーカー2~3社に話をしましたが丁重に断られました。現在は一部を精密加工する友人の会社に依頼しています。いずれ海外のメーカーが目をつけ、製品が海外で流行ったら、日本で流行るものと思います。
 患者さんの口の中には論文にない多くの真実が有るので益々『理論』を証明する器具に加え、最近新たに導入した歩行測定の高感度の測定器でほぼ完成の域に達しました。

 咬合に関して学生時代に興味を抱いた疑問が、ようやく娘が大学院で顎関節の研究をしていたお蔭で自分なりの成果を出すことが出来ました。そして、以前にテレビで放映後トラブルを抱えた患者さんが全国から来院し、多数治療して多くの成果をあげました。しかし一部の患者さんの受けていた歯科医療の常識が、時には治療を困難にしていることが有ります。それは、色々なコンセプトで、色々な処置をした後にトラブルになったケースは、患者さんの脳ミソに刷り込まれたメモリーを消せないからです。事故で足を切断した人が、切断後も足が痛むのと同じ現象です。
 今までの治療の仕方がトラブルを起こしているにも関わらず、説明してもその考え方が浸透して説明を聞こうとしない人。このような患者さんには治療が不可能です。歯医者は神様ではないので。
 年取った歯科医師の自己満足でした。



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Vol 42 《日照不足と歯科医療》

 
 今年の8月の日照不足は珍しいようです。(今後地球温暖化で恒常的になるかもしれないと科学者が言っています。)
 小さい時の8月のイメージは、夏の太陽がギラギラ照り付け、お盆が過ぎると蜩が鳴き、夏休みは何時も外で日が暮れるまで遊んでいました。そして宿題がたくさん残り、毎年お盆が過ぎると焦っていた記憶があります。
 実家は花と農業で生計を立てていたので家の手伝いをほんの少しして後は近くの悪ガキと外で遊んでばかり、そのような環境で育つと日照りが少ないと野菜の発育が悪くなるという現実が良く理解できます。
少し曲がった野菜、色の悪い果物、水分が多すぎて少し筋の入った果物、これらはすべて売り物にならないという事で殆ど処分されます。
そういうニュース映像に、農業を少し手伝った関係で違和感を覚えます。
 苦労して作った食べ物が廃棄処分にされるのを見ると、CSテレビに映るアフリカの現状がオーバーラップされ心が痛みます。食べてしまえば、栄養的には問題ないのに、買う人はそんなに神経質なのかと嫌な気分になります。(レストランは別かもしれませんが)
 また、それらの野菜、果物を、売り物にならないという人の口元をテレビで見ていると、歯が欠けていたりして、専門家の目から見ると、どうやら歯より野菜、果物の方がマスコミの評価が高いのでは、と思わず溜息が出ます。

 人間の価値観は、人により異なるということを日ごろの長い臨床上、口の中からも疑問に感じます。転職して歯科界に入った人間として、この感覚は異常なのでしょうか?
若い人で、洋服、バッグ、爪などにとても気を使い手入れしているが、口の中を診ると思わずそれらとのアンバランスを感じ、何故歯の価値が低いのかと考えてしまいます。

 私の長い臨床経験で、これは、あくまでも私個人の考えですが、昔は歯科医師が少なく、患者さんが門前に朝早くから並んでいる時代がありました。
 前にも書きましたがその時代は、痛みを取って取りあえず詰るか、抜くか、簡単な入れ歯で何とかするか...。これらのパターンの繰り返し。昔は、患者さんが一度に押し掛けると、応急処置程度の治療をすることしか物理的に不可能でした。
 歯科医療は、先ず痛みを取ることから始まり、その処置を行い、次になぜそうなったのか考える。それを予防するには今後どの様な手段を講じるのか。昔習った電気回路の理論的なアプローチから個人的にはこの様に考えています。
 昔ながらの応急的な治療のみが定着すると、その考えは師匠から弟子に伝わります。
そうすると、歯に対する価値を認めないのも仕方がない、と最近理解しています。
 しかし、例えばインプラントにはものすごい価値を認める人がいます。このアンバランスを感じるのは異常でしょうか。若い歯科医に話をすると、先ずはとりあえずインプラントに飛びつく?歯科医師の何パーセントが自分自身でインプラントをしているのか知りませんが?
 医療行為は?医学的にファーストチョイスは病気の歯を治療して残すのが先だと思いますがいかがなものか?何もインプラントを否定するものではありません。歯科医学的に、関節を基準に設計されたインプラントは素晴らしいと思います。

 あまり歯を顧みなかった人は歯科の疾病で、又は全身疾患で人生の後半で膨大な医療費が発生している感が有ります。最近ようやくマスコミも歯と全身の関係を報道するようになりました。
 一方当医院で処置をして、20年、30年経過した人は、歯も含めて、人生の後半での医療費が少ない様に感じるのは、私の個人的な感想だけではないと思います。夏に書きかけた原稿が大型のディスプレーの隅にあるのを見つけて、時季外れの原稿になりました。            



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Vol 41 《車と歯科医療》


 車とは何ぞや?それは2点間の空間を移動する手段と解釈できます。それが空を飛べば飛行機で、爆弾を空間移動すれば、いま北朝鮮ではやっているミサイルになるわけです。(あのミサイル10発くらいで、日本の歯科保険制度の費用に比較すると、全ての国民の歯を治すことができるかもしれない?)車は現在、内燃機関からモーターに移行中です。車は殆どが規格品です。電波新聞を長年読んでいると、車関係の半導体、及び車関係の電子部品の開発が加速しているようです。
 一方、歯は顔かたちが異なるように、一人ひとり異なります。ですから、犯罪捜査、大規模災害で身元確認の役にたっているのです。

 では歯の役割とは? これは他の解説書に譲ることにして、この部分がトラブルを起こすと色々な問題が出るわけです。これは口腔を工場に例えるなら通常28人(28歯)で仕事を分担していて、噛み切る役、すり潰す役、全体の顎の動きに命令を出し、仕事の監督をする役、等々です。これらの工場で働く人(歯)の半数は顎の関節に全てぶら下がり一つの集団として工場(口腔)が成立しています。この工場で働く人間の一人がサボると、その影響は、他の27人に直ちに影響が出ます。また、人数(歯)が、半分くらいになっても、それらを操る中央命令系統は、他の部署の脳ミソが指揮します。
 人数(歯)が半分でも仕事の量は変わりません。何故なら、食べる量は減らないからです。この残りの人材に代わるのがロボット(入歯)です。

 私の車は、現在25年近く使っていますが、現在までに多くのトラブルを経験し、ディーラーでは手に負えなくなり、車のメカニズムを本当に良く知る、現在の修理工場をみつけ依頼しています。長年使っていると車の長所、欠点が良くわかり、欠点の部品を交換すると新車によみがえります。
 実は、口も、工場で働く人間に相当する(歯)と長年付き合っていると、働いている人(歯)が青年なら問題がないが、段々彼らが年をとると、不具合が生じるため各部署の役割が良く理解できます。
 彼らをずっと観察しないと理解できない部分が車同様に現れます。その一つが、年をとると身長が縮み、それと同様、顎も小さくなります。(車は、古くなっても部品がほんの少し減るだけです)すると、とたんにかみ合わせが狂ってきます。精度のわるい入れ歯は、ガタがそれらを吸収します。また、入れ歯接着剤は、それらを分からなくします。その代わりに、顎の骨が犠牲になり大きく吸収されます。しかし、顎の動きを精密に再現して作った入れ歯は、体重の変化などの微妙な変化を口の中で知ることができます。
 また、長年にわたり、歯を真剣に残す努力をすると、歯を失った時にどうしたら残っている歯に最も負担を少なく、機能させるかというノウハウが蓄積されます。したがって、キチンとした入れ歯を入れると、残っている歯が逆に健康で長期に機能を発揮できます。私の経験では、40歳代から統計学的に急に歯がなくなる傾向にあります。と同時に歯の治療は急に難易度が上がります。

 いままで4回のテレビ出演がきっかけで、膨大な数の色々なトラブルを抱えた患者さんを短期間に診ることができました。しかし、車と異なり、歯は簡単に他人とは比較ができません。もし、車のように簡単に比較ができたら、歯を失う人は、鼻の頭がなくなる病気のように大騒ぎをすると思います。
 まさに、狂った感覚を補正するのが脳ミソの働きです。ほかの部分で、それらを補正するために頭を曲げたりして、かみ合わせのアンバランスを補正するようです。以前から当医院では理解していましたが、うまい表現方法がありませんでした。しかし最近世界で初めて開発された歩行のパターンを測定する精密な機器を使う事により、噛み合わせと歩行とは密接に関係が有る事が判明しつつあります。多くの健康長寿の人を調べるとある程度法則があるようです。歯科医療も長期予後の観察から、教科書にはない多くのヒントが得られます。
 人間の体は、本当に良くできていますね。車を乗ったときにたまには歯のことも思い出してください。


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